株式会社ウェルフェアプラス千葉

2024年10月9日

株式会社ウェルフェアプラス千葉

千葉県佐倉市で就労継続支援A型事業所『弁当工房SAKURA』を経営されている清水雅貴さま。

かつては東京で飲食店を経営されていた清水さまは2013年の『やどかり弁当』へのお取り組みからデリバリーを拡大し続け、2018年には『はぐくみ弁当』で障害福祉を組み合わせ、現在では福祉事業を主軸とした事業展開を進めています。

東京で飲食を中心とした事業展開をしていた清水さまが、なぜ千葉県佐倉市で福祉事業を展開するに至ったのか。30人もの障がい者を雇用し、次に見据える先はどのようなビジョンなのか。

清水さまのこれまでとこれからの事業展開の展望とともに、福祉においてどのような取り組みをしていきたいか、GLUGコラム編集部の山木がお聞きしました。

課題

  • エリアに関わらず安定した売上をつくりたかった
  • 経営者として考える時間を増やしたかった
  • 利用者の集客・定着を進める必要があった

実行

  • デリバリー事業『やどかり弁当』に取り組み
  • 福祉のコンサルティングも受け就労継続支援A型を開始
  • GLUGのサポートを最大限に活用

結果

  • 24年度に約9,800万円の売上見込み
  • AB多機能を始め、他の福祉事業にも進出する
  • 利用者の一般就労に向けて支援をしていく

働き方、経営の在り方に疑問があった

山木:清水さまはこれまでどのようなご経験があり、どのようにしてデリバリー事業、そして福祉事業を始めるに至ったのでしょうか?

清水さま:私が最初に始めたのは住宅設備系の事業で、22歳のころに設立しました。

父も経営者として様々な事業を営んでおり、私とはまったくの別分野での会社を経営していたのですが、あるタイミングで「最後は好きだった飲食業に落ち着きたい」とのことで東京ビッグサイトの近隣で飲食店をオープンしました。

私も店舗の経営を手伝っていたのですが、東京ビッグサイト付近という土地の特性上、なかなか客足・売上を安定させることが難しく、特にディナーの時間帯をどのように運営するかが課題でした。

夜遅くまで働いても収益が思ったように上がらず、これが自分のすべき経営なのかと考えていたところ、GLUGの営業の方から『やどかり弁当』のご提案を受けました。

当時から100食ほどのお弁当をつくる機会もあり、店舗規模に関係なく売上を伸ばすことができるという点からもメリットを感じたことから、当初はサイドビジネスとしてデリバリーに取り組んだのですが、これが予想を大きく超える売上となってくれました。

企業にメニュー表を配るほど売上が伸びるため弁当の製造拠点も増やし、安定した利益が入ってくるようになったため、課題となっていたディナータイムの営業も停止。当初感じていた課題は『やどかり弁当』に取り組んだおかげで解決しました。

しかしそこから数年が経ち、経営者としての時間が増えるなかで、「ずっとこの生活・経営で良いのだろうか?」という疑念がまた湧いてきました。

その時はコロナによる影響から飲食店も畳んでデリバリー事業一本で経営しており、時間的な余裕が生まれていたことも影響していたのかもしれません。せっかく構築し安定しているこの事業に「さらに次の一手」がないかとGLUGの営業の方に相談したところ、「デリバリーと福祉を組み合わせた店舗があるので見学しませんか」という声をいただきました。

これまで福祉について触れたことも考えたこともありませんでしたが、「障害をお持ちの方に働くちからを養う機会を提供し、その報酬を国から受け取る」というビジネスモデルと聞き、デリバリー事業との親和性を感じたことは確かです。

企業向けのデリバリー事業を伸ばすためにはどうしても数を売り、人件費を始めとした諸経費をいかに削るかが利益を左右します。しかし量をつくるためには人手が必要になってしまうというジレンマを、もしかしたら解消できるかもしれないと感じました。

その予感は確信に変わりました。当時、富山でお取り組みされていた企業さまを見学させていただいたのですが、20名以上の人員で非常にスピーディーにお弁当を作成されていらっしゃいました。就労継続支援A型では比較的軽度な障害をお持ちの方が働くことが多いとはもともと聞いていたものの、誰が障害を抱えていらっしゃるか見分けもつかない光景がそこにはありました。

また「いまの事業における次の一手になる」という確信とともに、それまで考え着くことがなかった思考にいたりました。それは、これまで自分や従業員の「生活」であったデリバリー事業が、福祉というかたちをとることで新たな意味を成すと感じられたのです。

経営としての視点と社会貢献が両立できる。残念ながら東京都での福祉事業の新規開業は厳しいというお話を受けましたが、すぐにでも取り組みたい気持ちがあったため、近隣で取り組めるエリアとして聞いていた千葉県佐倉市での開業を進めました。

事業所名について、最初は「佐倉市」という音から考えたこともありますが、自分自身がかつて働き方に悩んだこと、この事業所を通して一人でも多くの障がいをお持ちの方に豊かな経験をしてもらいたいと思ったことから、「独立」「善行」「心の平安」といった花言葉を持つ桜から『弁当工房SAKURA』と名付け、再スタートを切りました。

最大の敵は”不安”だった

山木:お弁当は安定して売れていたとお伺いしましたが、まったく異なる地域での再スタートに不安はなかったのですか?

清水さま:デリバリーの事業については不安は一切なかったですね。むしろ、競合他社がたくさんいた東京という地域で売れていたのだから、地方に寄った方がより売れる算段はついていました。

心配だったのはやっぱり未経験である「福祉」の領域でした。それは利用者さま(施設を利用される障がい者)がどれほど集まるかという点であり、給与と報酬のタイムラグという福祉特有のシステムによるキャッシュフローの悪化でした。

利用者さまが集まるか、そして定着するかという点については当時は本当に大変でしたし、いまでも一部は模索中です。いまだからこそ思うのですが、利用者さまが集まり定着する事業所にするためには、伸び伸びと働ける居心地の良さは当然のことながら、適切な支援ができるかに尽きます。

そのためには企業としての理念と、それを従業員一人ひとりに落とし込むことが一番重要だと感じています。また、最終的な目標は利用者さまの「自立」であることを忘れないよう、従業員には伝えています。そのため、利用者さまによってはあえて寄り添い過ぎないという在り方をする場合もあります。

キャッシュフローについては1年目は赤字となるとは分かっていたものの、キャッシュがどんどん目減りしていくのはやはり精神的に圧迫されました。ただ、そこで焦って目先の利益を追うようなことをしなくて本当に良かったと思います。

現在は利用者さまも30名いらっしゃり、会社としてのマンパワーも安定しています。また地域に根付いたビジネスであるため、周辺の企業からのお仕事の依頼やイベントやセミナーなどへの登壇依頼もいただくようになりました。現在は月々の利益で100万を超えるようになってきたので、より利用者さまが働きやすい環境をつくっていきたいと考えていますね。

GLUGは強力な支援者として伴走し続けてくれる

山木:紆余曲折あってのいまがあると思うのですが、そのなかでGLUGのサポートはいかがでしたか?

清水さま:事業の構築はもちろんのこと、運営についてもしっかりサポートしてくれるので非常にありがたいですね。各種ツールやデザイン、採用など、守備範囲も広くて助かっています。

デリバリーについてはしっかり売れるように立ち上げるだけでなく、より多く売れるように新たな企画や商品開発もしてくれるし、全国に取り組み店舗があるからこその販売動向の分析もしてくれる。

福祉の領域でも困ったことや課題があればいくらでも対応してくれるうえ、弊社の場合はB型事業所との多機能化も実行してくれました。まさに各社ごとのオーダーメイドの支援を実施してくれる会社だと感じています。

極論をいえば、デリバリー事業も福祉事業も、GLUGに頼らなくてもやること自体は可能だと思います。ただ、これだけの知識量があって、企画力や分析力があって、いくらでも働いてくれる……そんな社員を雇おうと思ったら、GLUGを頼った方がずっと安価で安定しているでしょうね。

山木:ありがとうございます。このようなサポートがあったらより助かるのに、という点は何かございますか?

清水さま:現状はほぼほぼ満足しています。一点のみあるとすれば、定期的に開催いただいているサービス管理責任者会議の支援員版があるとなお良いかなと感じます。

施設の利用者さまと関わる機会が多いのは支援員も同様なので、他社での良い取り組みや事例を知ることができれば、自社でも実装することでより良い事業所にできると思っています。

また、支援員同士で話す場があれば、普段の事業運営で見えづらい悩みや課題も出てくることもあるでしょう。それをどのように解決するかというような率直で良質なコミュニケーションが生まれれば、自ずと利用者さまへの関わり方も変わり、結果的に日々の支援が最適化されるのではないでしょうか。

山木:貴重なご意見をありがとうございます。

多角的に『自立』を支援できる会社にする

山木:最後に、今後どのようなかたちで事業を展開していきたいか教えてください。

清水さま:まずはこの事業所を卒業し、一般就労に移る利用者さまを増やしていける環境・体制をつくっていきたいと思っています。

利用者さまにとって働いて稼げる環境はつくれましたが、やはり最終的には自立し、一般就労できるようにすることがいまのミッションだと考えており、それもあって今年は5人に一般就労に移行してもらうことを目標にしています。

そのうえで今後は、福祉という領域で様々な事業を展開していきたいですね。

当面は2024年10月に指定予定となっているAB多機能事業所の運営を軌道に乗せることが目標になりますが、そのほかにも障がい者グループホームや放課後等デイサービス、就労移行支援など、多角的に事業を展開していきたいと考えています。

福祉事業は単体でもビジネスとしてインパクトがありますが、複数の事業を展開することでどんどん相乗効果が出ます。また、一社が多角的に事業を展開することは利用者さまの生活の様々な面での負担を軽くし、自立した生活に向けての支援ができるものと信じています。

放課後等デイサービスで就学児童のころからサポートし、障害の程度によって就労継続支援A型・B型で働くスキルを身につけてもらい、生活はグループホームで支援し、就労移行支援・定着支援で一般企業への就職をサポートする……ゆくゆくはそこまでの支援ができる会社にしていきたいと、そう考えていますね。

山木:本日はありがとうございました。素敵な目標の達成のため、弊社も全力で伴走させてください。

<清水さまの事業所>

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