飲食店は自己資金ゼロで開業できる?資金の目安と方法、注意点を解説

2024年6月6日

飲食店の開業を考えている際に資金面がネックとなり、なかなか足を踏み出せない方もいるのではないでしょうか。

「自己資金ゼロでも開業できる」という意見を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、本当にそのようなことができるのでしょうか。

今回は飲食店の一般的な開業資金・自己資金の目安、自己資金ゼロでも開業する方法、自己資金の考え方などをご紹介していきます。

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飲食店の開業資金の目安は?

開業する場所や導入する設備、規模などによって前後するものの、飲食店の開業資金は一般的に500万円から1,000万円だといわれています。

これは客席が必要な通常の飲食店の相場であり、客席を用意しなくて済むテイクアウト・デリバリー専門店の場合は200万円から500万円前後になります。

物件取得や固定賃料が発生しないキッチンカーの場合は、さらにコストを抑えることが可能で、車両購入費・維持費がかかるものの、200万円から300万円ほどで開業できます。

確保できる自己資金と照らし合わせて、開業する飲食店の形態を決めるのも一つの手だといえます。

飲食店の開業資金の目安【フランチャイズの場合】

フランチャイズへの加盟で飲食店を開業する場合、飲食店のジャンルや形態、規模によって開業資金が左右され、開業資金の目安は50万円から2,000万円前後と大きく開きがあります。

大規模で安定した売上を確保できる可能性が高い場合は高額になるケースもある一方で、個人店を開業するよりも安定性が高いフランチャイズもあります。

フランチャイズの大きなメリットとして以下の点があげられるため、開業や経営に不安がある方はフランチャイズでの開業を検討すると良いでしょう。

  • 本部のネームバリューを活用できる
  • 本部が開業手続きなどのサポート
  • 売上向上を図る集客サポート
  • 安定した経営のための提案
  • 未経験でも飲食店を開業できる

飲食店の開業における自己資金の割合は?

飲食店を開業する場合はある程度の自己資金を確保しつつ、不足分を金融機関などから融資してもらう方が多い傾向にあります。

飲食店に限らないデータになるものの、日本政策金融公庫総合研究所の「2023年度新規開業実態調査」によれば、開業資金のうち平均23.8%(調達合計額1,180万円のうち280万円)が自己資金のようです。

開業資金のうち20から25%は自己資金を確保しておくことが理想的だといえ、最終的に必要になる開業資金を計算したうえで自己資金も確保しておきましょう。

自己資金ゼロで飲食店を開業するには?

ある程度の自己資金を確保してから飲食店を開業する方が多い傾向にあるものの、自己資金ゼロでも飲食店を開業する方法はないのでしょうか。

ここでは自己資金ゼロでも飲食店を開業する方法をご紹介していきます。

創業時支援の「新規開業資金」を活用する

日本政策金融公庫が実施する創業時支援の「新規開業資金」を活用すれば、自己資金ゼロでも開業資金を確保できるかもしれません。

新規開業資金は新規開業する方もしくは開業後7年以内の方を対象に最大7,200万円を融資する制度です。

審査通過で融資される仕組みなので、現実的で詳細な内容の事業計画を提出するようにしましょう。

以前は「新創業融資制度」という名称でしたが、2024年3月に自己資金要件などが撤廃・リニューアルされて開業する際により活用しやすくなりました。

金融機関で融資を申し込む

民間の銀行や信用金庫がおこなっている融資制度を活用して、開業資金を確保する方法もあります。

ただし、民間の銀行や信用金庫は「貸し倒れリスクがないか」「ビジネスとして成功できるか」といった観点で融資を判断しているため、審査は厳しい傾向にあります。

自己資金ゼロの場合は「貸し倒れリスクがある」とみなされるおそれもありますが、充実した内容の事業計画を準備できるのであれば可能性はゼロではありません。

金融機関によっては融資制度が設けられていない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

投資家に出資してもらう

開業したい飲食店のコンセプトが魅力的で絶対に成功できると確信しているのであれば、投資家に開業資金を出資してもらうのも良いでしょう。

個人投資家や上場を目指すベンチャーキャピタルなどから資金提供を受けることができれば、出資額によっては自己資金ゼロでも開業資金を確保できる場合もあります。

しかし、開業する飲食店が魅力的でビジネスとしても成功できる可能性が高くなければ出資を受けられません。

また出資者に経営方針を決められてしまう場合もあり、当初思い描いていた飲食店を経営できないおそれがあります。

消費者金融・カードローンで借入れする

借入れの審査があるものの、銀行や信用金庫よりも消費者金融・カードローンの審査のハードルは低い傾向にあります。

無収入や信用情報に傷があるなど一部の例外を除いて、ほとんどの場合は審査に通過できる仕組みです。

ただし、審査に通過しやすい一方で金利が高い傾向にあり、多くの消費者金融・カードローンが18%前後の金利を設けています。

借入れで開業資金をすべて確保した場合は高額な金利で返済に苦労してしまうため、開業資金をすぐに確保できる方法ではあるものの、可能な限りは手を出さないようにしましょう。

家族や知人に出資してもらう

金融機関やカードローンの金利が心配な方は、家族や血縁者、知人から資金調達を集めるという方法もあります。

ただし家族や知人からの資金調達だけで開業資金を確保することは現実的ではなく、開業資金1,000万円の場合は100人から10万円ずつ借りなければなりません。

また親族でも貸してもらえるとは限らないほか、付き合いが浅い知人の場合は関係性が崩れてしまうリスクがあります。

少しだけ開業資金を確保したい場合に、あくまでも断られることが前提として、信頼関係を築けている資産の余裕がある親族・知人に相談してみるのは良いでしょう。

クラウドファンディングを使う

クラウドファンディングは、インターネット上で不特定多数の方からプロジェクトの実現に必要な資金を集めるための方法で、近年注目を集めています。

飲食店を開業する目的や魅力、出資することで得られるメリットなどが明白であれば、応援しやすくなる傾向があります。

必ずしも目標とする資金に達するとは限りませんが、上手くアピールできればクラウドファンディングだけで飲食店の開業資金をすべて確保することもできます。

特にSNSやブログなどで一定数のフォロワーがいる場合は、クラウドファンディングを活用しない手はないでしょう。

飲食店開業で自己資金を調達する際の注意点

自己資金だけでは開業資金が足りない場合は金融機関などで融資を申し込む必要がありますが、いくつか注意点があります。

ここでは融資を受けるうえで重要になる自己資金のポイントをご紹介していきます。

自己資金の範囲を把握しておく

自己資金とは返済義務がなく出所が明確に分かる資金のことであり、すべてが自己資金として認められるわけではありません。

いざ融資を受ける際に資金のほとんどが自己資金として認められなかった、という事態を防ぐために事前に自己資金の範囲を確認しておきましょう。

自己資金として認められる資産は、以下の通りです。

  • 通帳で貯蓄していたことが明白な預貯金
  • 配偶者の預貯金
  • 両親・親族から贈与された資金
  • 相続で受け取った資金
  • 出資によって得た資金
  • 退職金
  • 不動産などの資産売却によって得た資金など

金融機関や親族から借りた返済義務のある資金や、資金の流れが不明なタンス預金などは自己資金として認められていません。

また融資を受けるために他の口座から資金を移動させた場合は「見せ金」と判断され、融資が下りないリスクがあります。

自己資金は事業のために使用する

融資を受ける際に金融機関などに報告した自己資金は、すべて必ず開業資金として使うようにしましょう。

金融機関は資金が原因で開業が難しい方に不足分の資金提供をしているため、自己資金を開業資金として使わなかった場合は審査が覆ることになります。

例えば自己資金250万円で金融機関から750万円の融資を受けた際、自己資金250万円を使わなかったことが発覚すれば、融資金額の返還を求められることになります。

結果的に開業資金が余ってしまった場合も同様の対応が取られてしまうため、開業資金と融資を受けたい不足分は正確に計算しましょう。

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まとめ

飲食店は自己資金ゼロでも開業することは不可能ではないものの、いずれの方法も自己資金を確保するのと同程度の難易度です。

融資を受ける際にも自己資金がどの程度あるのかも審査の判断基準になり、自己資金ゼロの状態からカバーするためには成功が確信できそうな優れた事業計画を用意する必要があります。

飲食店に形態によって必要な開業資金・自己資金は大きく異なりますが、まずは開業資金を抑えやすいデリバリー・テイクアウト専門店などで開業してから自己資金を貯める方法もあります。

また初めての飲食店の開業を検討している場合は、フランチャイズへの加盟がおすすめだといえます。

フランチャイズは本部が融資のサポートをしてくれるほか、経営ノウハウの共有や集客サポートなどをしてくれるため、成功しやすい傾向にあります。

異業種から飲食店の開業をしたい場合は、フランチャイズも開業の選択肢の一つとして考えると良いでしょう。

なお、GLUGでは福祉・飲食の領域に特化して開業から運営までトータルでサポートしています。

福祉事業について詳しく知りたい方はこちらのページもご確認ください。

担当者T.Aのイラスト

記事の監修者

平林 英雄

行政書士・保育士・AFP

新卒でコンサルティング会社に入社し、10年間にわたり中小企業の経営計画策定や新規事業の立ち上げ支援に従事。飲食、介護、福祉分野のチェーン本部を経験した後、独立し行政書士としての活動を開始。
現在は法人設立や資金調達などの創業支援、許認可取得や補助金申請などの中小企業支援をおこなっている。2021年より中小企業庁の認定経営革新等支援機関。