就労継続支援A型の収益モデルは?開業方法や経営のポイントを解説

就労継続支援A型の収益モデルは?開業方法や経営のポイントを解説

新規事業として就労継続支援A型事業を検討する際、福祉事業という特殊な業界であることもあり、収益構造や国からの指定の受け方など、不明な点が多数あるのではないでしょうか。

この記事では、初めて就労継続支援A型事業の開業を検討する方向けに、収益の構造や開業方法、上手く経営を進めるためのポイントをご紹介します。

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就労継続支援A型とは?

就労系障害福祉サービスには、就労継続支援A型事業のほかにも、就労継続支援B型事業、就労移行支援事業、就労定着支援事業、就労選択支援事業(令和7年10月開始予定)が存在します。

その中でも働くこと、働くためのスキルを獲得することに特化している就労継続支援A型事業とはどのようなものか、どのような収益構造になっているかをご紹介します。

就労継続支援A型の概要

就労継続支援A型とは、病気や障害などの理由で一般企業で働くことが難しい方を対象に、働く機会を提供する障害福祉サービスです。

事業者は仕事を通しての就労訓練や、より良い社会的生活を送れるような支援をおこなうことにより、
国から訓練・支援の報酬を受け取ることができるビジネスとなっています。

「働きたいが、いますぐ一般企業で働くのは怖い」
「自らの力で生活ができる自信とスキルを得たい」
「ゆくゆくは一般就労したい」などの気持ちを持っている方が主に利用し、雇用契約のもと、サービスを提供します。

厚生労働省の調査によると、同じく障害福祉の就労サービスであるB型事業所が全国で13,828件あるのに対し、A型事業所は3,922件と非常に少なく、需要があるサービスであるといえます。

就労継続支援A型のサービスについてはこちらでも詳しくご紹介しています。

なお、名前が似ている事業に「就労移行支援事業」がありますが、就労継続支援A型事業が「働く場所」「スキルや経験を得る場所」といえるのに対し、就労移行支援事業は「就職するための場所」に特化しているといえます。

就労移行支援事業所では働くための体調管理を始めとした基本的なところから、ビジネスマナーやPC操作などの各プログラムを実施したうえで、企業探しや面接サポートなどを経て、一般企業へ就職することが目的となります。

労継続支援A型の収益構造とは?

就労継続支援A型の収入は福祉サービス提供の報酬である「給付金」と「生産活動売上(事業売上)」の2つが存在します。

国から受け取る給付金の金額(基本報酬)は施設の利用定員や従業員の人員配置のほか、5つの観点で総合評価される評価点により定められ、利用者の人数によって増減します。

また基本報酬とは別に、「加算」「減算」という報酬の増減が存在します。

欠席時の連絡や送迎など、サービスの質を上げるような活動で一定の要件を満たすと「加算」という報酬が得られるようになり、「指定基準」と呼ばれるルールを満たせない状態が続くなどすると「減算」となり基本報酬が満額請求できなくなります。

一方、生産活動売上については、店舗運営をおこなったり、他の企業から業務を請け負うなどして、エンドユーザーや委託企業から受け取る売上になります。

注意すべきポイントとして、収入は2つのルートがありますが、利用者の賃金は給付金からではなく、生産活動売上から支払わねばなりません。

しかし厚労省の調査によると、生産活動の収益が賃金を下回っている事業所は56.5%にのぼり、収支の改善が急務となっています。

また、不正請求となれば報酬の返還や追徴金、行政処分につながる可能性があるため、勤務日数や時間、利用者人数などは厳格に管理し、減算なども含めて正確に請求を出す必要があります。

かつてはサービスの実態がなかったり、実際には勤務していなかったにも関わらず請求を起こし、給付金狙いでの運営をおこなう法人も存在しましたが、国の基準や実地指導・書類確認も厳しくなり、健全な事業運営をおこなっていることが重要視されています。

ただし健全に事業を経営し、多くの利用者がいれば、毎月安定して報酬を受け取ることができるビジネスモデルでもあります。

GLUGのサービスを導入した事例では、年間4,000万円以上の経常利益をあげている企業も存在します。

就労継続支援A型の申請条件

就労継続支援A型事業所を開業するには、国から「指定」を受けるために、定められている要件を満たす必要があります。

ここではその条件のうち、スタッフ配置、有資格者(サービス管理責任者)、設備、法人格や定款についてご紹介します。

スタッフの配置に関する条件

就労継続支援A型事業所では、定められた職種と、利用者の人数ごとに何人配置する必要があるかという「人員配置基準」が設けられています。

人員配置基準とは、就労継続支援A型事業がサービス利用者の就労に向けたスキルアップを目的としていることもあり、サービスの質を担保するために設定されているルールです。

人員配置基準を満たしていない場合は開業できず、また、開業後も基準を満たし続ける必要があります。

従業員の退職などで基準に達していない場合、その期間の報酬の減額や返還、悪質な場合は行政指導が入ることもあります。

なお、就労継続支援A型においての人員配置基準は以下となります。

利用者数と常勤換算の計算方法

ご紹介したよう、就労継続支援A型では4つの職種があり、それぞれ常勤・非常勤のルールが存在します。

管理者はサービス管理責任者が兼任できますので、常勤の管理者兼サービス管理責任者1名と、生活支援員・職業指導員(いずれか常勤)の計3名が最低の配置基準となります。

また生活支援員・職業指導員については「常勤換算」という方法で数え、労働時間を所定労働時間で割ったものとなり、例えば所定労働時間40時間の事業所で週20時間働く場合、常勤換算0.5人という計算になります。

それを踏まえ、生活支援員・職業指導員は常勤換算上の合計人数が前年度平均利用者数を10または7.5で割った数以上になるように配置しなければなりません。

最低の配置数は10で割った数ですが、サービスの質が高いと考えられるため報酬額が高くなることから、多くの事業所では7.5で割った数に合わせて職員を配置します。

上記のことから、前年度の平均利用者数が20名、所定労働時間40時間の事業所で7.5:1の配置にした場合は2.7となるため、生活支援員・職業指導員は合計2.7人(うち1人は常勤)を配置する必要があります。

サービス管理責任者に関する条件

サービス管理責任者は障害福祉サービスを提供するにあたり、適切な支援を提供するための全体管理などをおこなうリーダー的な職種です。

施設を利用したい方の個別支援計画の策定や見直し、従業員への指導や研修、他の障害福祉サービス事業所や医療機関との連携など、就労継続支援A型事業所としてのサービスの質の向上を業務とします。

サービス管理責任者には資格は不要であるものの、一定の実務経験と研修の受講が必須になります。

必要な実務経験は業務の内容や資格の有無により変わります。

研修については基礎研修と実践研修があり、基礎研修は実務経験要件をクリアする予定の2年前から受講できます。

26.5時間の基礎研修を受け、その後2年のOJT期間を経た後に、14.5時間の実践研修を受講すれば、サービス管理責任者として配置することが可能になります。

なお、サービス管理責任者として配置したのちも、5年ごとにサービス管理責任者等更新研修を受けなければならないので注意が必要です。

設備に関する基準

就労継続支援A型で使用する物件・設備には、「設備基準」という障害者総合支援法に基づいた規定が設けられています。

内容は以下となっています。

ただし上記は最低限のもので、各自治体によって追加のルールが存在するため、事前に確認をしておくことが重要です。

また上記以外にも、就労継続支援A型事業所として開業するには、建築基準法や消防法などが関係します。

こちらについても各自治体の建築指導課や消防署などによりルールが異なるうえ、物件によっては設備増設などが必要になり費用が嵩むケースがあるので、物件選定は慎重に進める必要があります。

法人格や定款に関する規定

就労継続支援A型事業を開業するには法人であることが必須となります。

また、社会福祉法人以外での開業の場合は「専ら社会福祉事業を行う者」である必要があるため、既に設立されている法人がある場合でも、新たに社会福祉事業をおこなう法人を設立する必要があります。

定款の目的も「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」など、障害福祉事業をおこなうための文言を記載したうえで、サービス利用者がおこなう業務の目的事項を記載しなければなりません。

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就労継続支援A型を運営するポイント

就労継続支援A型事業は開業においてもハードルが存在しますが、運営においても通常の経営とは異なるポイントがあります。

障害福祉事業であることを意識しなければなりませんが、一方、ビジネスである以上、収益を上げなければなりません。

より多くの障がい者にサービスを提供するためにも、事業として成功させる必要があります。

ここでは、就労継続支援A型事業を成功させるための運営のポイントを3つご紹介します。

一般就労への移行を目指す

就労継続支援A型では、サービスの利用者に働く場を提供するとともに、就労するためのスキルや知識、経験を身につけることを目的としています。

そのため、より多くの利用者に働いてもらうことだけではなく、利用者の意向によっては一般就労に移行できるようサポートすることも重要です。

国の傾向としても一般就労に多くの利用者を移行させている事業者を高く評価する「就労移行支援対象加算」の仕組みを整えており、一般就労への移行者が多い事業所はより多くの利用者の紹介を受けられることとなります。

また日本の企業の半数以上は障がい者の法定雇用率を満たしていないため、ハローワークなどと連携すれば、他社の障がい者雇用の状況を把握することは難しくないでしょう。

企業より求められている人材像とサービス利用者の障害特性・得手不得手に合わせ、適切な就職のサポートをおこなうことで、福祉サービスとしての価値とともに収益を上げられます。

適切な労働環境を整備する

雇用契約を結び労働してもらうという意味では就労継続支援A型は通常の経営と同様ですが、障害福祉事業であることから、より働きやすい労働環境を整えたり、適切な雇用管理について意識する必要があります。

「とにかく人を集める」「とりあえず働いてもらう」「簡単な作業だけをお願いする」という意識では、利用者は集まりません。

就労継続支援A型を利用したいと考える方には様々な障害や難病があり、その特性も得意とする業務も一人ひとり異なります

それらに適した業務や支援ができるか、また、今後どうなりたいかなどの意向に合わせたコミュニケーションをとることが、結果的に多くの利用者が集まる事業所づくりにつながります。

また先述したよう、国への請求は厳正におこなう必要があります。

そのため、雇用状況や支援の記録、利用状況の管理、関連書類の作成など、管理・事務業務も非常に重要といえます。

基本報酬単位を上げる

国から受け取る基本報酬の単価は、「1日の平均労働時間」「生産活動」「多様な働き方」「支援力向上」「地域連携活動」の5項目からなる前年度のスコアに応じて算定されます。

同様の人数・時間で利用されていたとしても、基本報酬単価が変われば報酬の総額も大きく変わります。

職員配置が7.5:1の事業所で算定すると、最低スコアの60点以下と最高スコアの170点以上では、報酬の単位は実に2倍以上異なります。

スコアの評価内容は適切な支援を提供し、健全な経営状況を作っていれば上がるものですが、スコアが高くなるよう日々意識することが大事です。

また、サービスの品質を上げる取り組みをおこない、要件を満たせば、基本報酬とは別に「加算」を得られます。

サポートの工数や書類等は増えますが、加算も得られつつ、サービスが充実している事業所として利用者の増加も見込めます。

事業所の人員リソースやタスクの状況に合わせ、対応が可能なようでしたら積極的に狙うと良いでしょう。

まとめ

就労継続支援A型では障害や難病を持っている方に働く機会を提供しつつ、就労するための訓練・支援をおこなうことで国から報酬を受け取ります。

そのビジネスモデルから開業の条件や経営においての着目すべき点など、通常の経営とは異なる点もありますが、健全に経営ができれば非常に安定性が高い事業といえます。

ただし不正と国に判断された場合、報酬の返還や追徴金、行政処分などを受ける可能性もあるため、開業については慎重におこなうと良いでしょう。

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