訪問看護の給料は本当に上がる?年収相場と実際の働き方から読み解く収入の実態

最終更新日:2025年12月12日

訪問看護の給料は本当に上がる?年収相場と実際の働き方から読み解く収入の実態

少子高齢化などによって年々、訪問看護の需要が高まっていますが、訪問看護師の給料がどれぐらいなのか知らない方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は訪問看護師の平均年収や手当の仕組み、給料が高くなりやすい主な理由、給料を上げるための方法などを網羅的に紹介していきます。

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訪問看護師の給料はどれくらい?最新の平均年収と月収の目安

ここでは訪問看護師の年齢別の平均月収と平均年収の目安を紹介していきます。

訪問看護師の平均年収と年齢・経験別の傾向

公益社団法人日本看護協会の『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果』によれば訪問看護師の平均年収は、約511万円(平均月収347,181円+平均賞与949,091円)です。

経験年数に伴って給与は増えていき、管理者・リーダー経験のある訪問看護師はより高い水準になりやすい傾向があります。

■年代別の平均月収(訪問看護ステーション・常勤)

年代平均月収
35歳から39歳323,324円
40歳から44歳326,793円
45歳から49歳348,799円
50歳から54歳352,908円
55歳から59歳373,823円

出典:公益社団法人日本看護協会『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果

またこうした年齢・経験による差に加え、同発表によれば訪問看護ステーションの運営主体や規模によっても以下のように給与水準は大きく変わることが説明されています。

■運営主体別の平均月収(訪問看護ステーション・常勤)

運営主体高い方の平均月収高い方の平均年齢低い方の平均月収低い方の平均年齢
日本赤十字社・社保団体・独法410,487円50.8歳348,361円43.8歳
協同組合384,695円47.1歳300,186円47.8歳
社団・財団法人363,170円51.2歳301,983円44.9歳
営利法人(会社)352,592円45.5歳301,055円39.5歳
社会福祉法人331,535円46.2歳305,011円43.8歳
医療法人340,521円49.8歳282,437円40.9歳

出典:公益社団法人日本看護協会『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果

■規模別の平均月収(訪問看護ステーション・常勤)

規模高い方の平均月収高い方の平均年齢低い方の平均月収低い方の平均年齢
5人未満328,794円46.2歳289,619円41.3歳
5人から10人未満357,682円47.4歳300,440円40.8歳
10人から15人未満378,012円48.9歳309,431円42.4歳
15人から20人未満382,301円44.4歳317,652円36.4歳
20人以上424,536円48.7歳314,912円34.5歳

出典:公益社団法人日本看護協会『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果

病院勤務との給与比較

公益社団法人日本看護協会の『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果』によれば、病院で働く看護師の平均年収は約562万円(平均月収382,093円+平均賞与1,036,378)です。

病院は夜勤・当直を前提とした働き方で、夜勤手当が総収入を大きく押し上げるため、訪問看護より平均年収が高くなる傾向があります。

一方、訪問看護では夜勤手当の代わりに、オンコール手当と時間外手当が設けられており、収入を増やすこともできます。

■訪問看護ステーションにおけるオンコール手当(1回あたり手当額・平均回数)

種類回答数1回あたりの平均手当額2024年12月の平均実施回数
オンコール待機(待機のみ)5372,233円7.7回
オンコール対応(電話対応)445609円5.0回
緊急出動(※時間外手当を除く手当額)4291,791円2.3回

出典:公益社団法人日本看護協会『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果

ただし、以下のように公益社団法人日本看護協会の『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果』によれば、時間外手当(残業手当)については、訪問看護ステーション勤務の方が病棟勤務よりも高い水準であることが説明されています。

種類平均時間外手当額
官公庁33,295円
訪問看護ステーション31,772円
病院27,457円
診療所15,681円
介護系サービス16,571円
看護系教育研究機関17,969円
その他15,119円

出典:公益社団法人日本看護協会『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果

同資料の平均的なオンコール手当と時間外手当を含めて単純計算した場合、訪問看護ステーション勤務での平均月収は約403,000円、賞与を含む平均年収は約579万円となります。

また訪問看護では、単独訪問による病状変化の察知や緊急判断など病院勤務よりも高度な判断力が求められる場面が多いことも特徴です。

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非常勤・パート勤務の時給相場と働き方の特徴

訪問看護ステーションでは非常勤・パート看護師の採用が多く、時給は1,800円から2,200円前後が中心と、外来パートより高めです。

これは訪問先で看護師に1人で判断・対応する専門性が求められること、また移動時間を含めた業務負担があることが理由です。

さらに時給制とは別に1件あたり1,500円から3,000円前後の「訪問単価制」 を採用するステーションもあり、成果が収入に反映されやすい点も時給が高めに設定される要因となっています。

訪問看護の給料を構成する手当の仕組み

ここでは訪問看護師の主な手当の仕組みを紹介していきます。

訪問手当(件数手当)が収入に与える影響

訪問看護の給与体系は事業所によって大きく異なりますが、主に次の3種類があります。

  • 基本給+オンコール手当などを支給
  • 基本給+訪問手当(件数手当)+オンコール手当など
  • 訪問件数で月収が決まる歩合制

訪問手当は1件ごとに支給され、1,500円から3,000円前後が平均的な相場で働いた分が分かりやすく収入に反映されます。

一般的な例として、基本給23万円から26万円に加えて1件あたり1,500円の手当を支給しているステーションで、1日に3,4件訪問した場合の月収イメージは次の通りです。

▼1日3件・手当1,500円の場合
・4,500円/日 × 月20日=約9万円の上乗せ
・基本給と合わせて約32万円から35万円前後

▼1日4件・手当1,500円の場合
・6,000円/日 × 月20日=約12万円の上乗せ
・基本給と合わせて約35万円から38万円前後

子育てをしている方や訪問看護の経験が浅い方は、歩合制のみの訪問看護ステーションは選ばない傾向にあります。

オンコール待機・緊急訪問に関する手当

訪問看護では、通常業務に加えて「オンコール対応」を求められる場合もあり、これに対して待機手当や出動手当が支給されます。

前述したように公益社団法人日本看護協会の『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果』によれば、オンコール対応の待機手当や出動手当の平均的な金額は次のとおりです。

■訪問看護ステーションにおけるオンコール手当(1回あたり手当額・平均回数)

種類回答数1回あたりの平均手当額2024年12月の平均実施回数
オンコール待機(待機のみ)5372,233円7.7回
オンコール対応(電話対応)445609円5.0回
緊急出動(※時間外手当を除く手当額)4291,791円2.3回

出典:公益社団法人日本看護協会『2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」 結果

オンコールは自宅で待機しながら利用者からの連絡に備える働き方で、待機回数や出動件数を多ければ月収が上がります。

ただし、夜間に連絡が入る可能性があるため、完全に休み切れない・生活リズムが乱れやすいなどの負担も生じます。

そのためオンコール手当は、収入面のメリットと業務負担の双方を理解した上で選ぶ必要があります。「オンコールの頻度」「スタッフ間で分担できる体制か」などを事前に確認しておくことが重要です。

事業所によってはスタッフの分担によってオンコール対応をしなくても良い場合があるため、子育てなどによってオンコール対応に不安がある方はそうしたステーションを選びましょう。

賞与とインセンティブ制度の傾向

訪問看護では、基本給に加えて賞与やインセンティブ制度が設けられている場合があります。ただし、どちらも必ず支給されるわけではなく、事業所ごとに運用が大きく異なります。

賞与額にばらつきが出やすいのは、訪問看護ステーションの収益が訪問件数や利用者数の増減に左右されるためです。

訪問件数が安定しているステーションでは賞与が高くなりやすく、変動の大きい事業所では少なくなる傾向があります。

またインセンティブ制度を導入しているステーションでは、一定件数を超える訪問や長時間訪問などの実績に応じて、訪問手当とは別に追加手当が支給されます。

評価基準が明確な事業所では、これらが積み上がることで年収が大きく伸びることもあります。

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訪問看護の給料が高くなりやすいと言われる3つの理由

訪問看護師の給料が上がりやすいのは、いくつかの要因があります。ここでは訪問看護師の給料が上がりやすい主な理由を説明していきます。

在宅医療需要の拡大で“人材不足”が続いている

訪問看護の給与が高くなりやすい背景には、需要増と人材不足が長期的に続いている構造があります。

病院の入院日数短縮や地域包括ケアの推進により在宅医療へ移行する利用者が増える一方、訪問看護師の確保は追いついておらず、事業所間の採用競争は年々激化しています。

そのため、経験者や即戦力を採用する目的で基本給や手当を引き上げる法人も多く、結果として給与水準が上がりやすい状況が続いています。

このような需要と供給のギャップこそが、訪問看護の給与が高くなりやすいと言われる最大の理由です。

個人のスキル・判断力が直接評価されやすい

訪問看護では、基本的に看護師が1人で利用者宅を訪問し、状況判断からケアの実施まで責任を持って対応します。そのため、個人のスキル・判断力がダイレクトに評価へ反映されやすいのが特徴です。

同行訪問をおこなう事業所もありますが、病棟のようにチームで動く場面は多くありません。提供しているケアの質が可視化されやすいため、能力の高い看護師ほど給与が上がりやすい構造になっています。

経験豊富で判断力の高い看護師は管理者候補として評価されることも多く、管理者クラスでは年収600万円から800万円に達するケースもあります。

このように訪問看護は、個人の力量が収入に反映されやすく、自身のキャリアを直接的に給与へつなげやすい働き方といえます。

訪問件数・オンコール回数で給料を上げられる構造

病棟勤務では、昇給は年齢や勤続年数に応じて上がる年功給が中心で、個人の働き方による給与差は比較的小さくなりがちです。

一方の訪問看護は、訪問件数やオンコール対応などの実績がそのまま収入に反映される構造になっています。

訪問看護ステーションによっては、訪問手当やインセンティブ、オンコール手当によって月収が伸びる場合があります。

逆に負担を抑えて働きたい看護師は件数を調整することで収入と働き方のバランスを取りやすい点も特徴です。

控えめに働く・しっかり稼ぐを自分で選べる柔軟さが訪問看護ならではの魅力だといえます。

訪問看護師の給料を上げるための具体的な方法

訪問看護師の給料は上がりやすい傾向にありますが、自ら行動していくことでより効率的に給料を上げることができます。

ここでは訪問看護師がより給料を上げるための主な方法を紹介していきます。

待遇の良いステーションを選ぶ

訪問看護で収入を上げるには、給与体系が明確なステーションを選ぶことが重要です。特に固定給+件数手当の組み合わせは、訪問件数が多いほど月収が伸びやすい仕組みです。

1件あたりの単価が高いステーションの特徴は、医療ニーズの高い利用者が多く、訪問内容が長時間・医療中心になりやすいケースです。

ただし、単価が高いからといって必ずしも働きやすいとは限りません。待遇の良さと安全性を見極めるためには、以下のポイントを確認しましょう。

  • 1日8件以上など訪問件数のノルマが極端ではないか
  • オンコールの頻度が多すぎないか
  • 急な呼び出しやサービス残業が慢性化していないか
  • 記録・移動の負担が現実的な範囲かなど

給与を上げたい場合は、待遇面だけでなく訪問件数・オンコール・業務量のバランスを総合的に見て判断することが重要です。

オンコールに積極的に参加する

訪問看護で収入を上げる有効な方法がオンコールへの参加です。待機手当や出動手当は月収に直結し、月で数万円、年間では十数万円の差が生まれます。

さらに夜間の症状変化や緊急対応では主治医への報告・相談が必要になるため、状況整理の力や指示受けの実務スキルが鍛えられます。

こうした経験は在宅医療で高く評価され、転職市場でも大きな強みになります。オンコールは負担もありますが、収入と専門性の両方を伸ばせる実践的な手段だといえます。

管理者・主任など役職を目指す

訪問看護で年収を大きく伸ばしたい場合、主任・管理者といった役職を目指すことが最も現実的です。

主任の年収相場は600万円前後、管理者では600万円から900万円前後とされ、役職に就くことで収入は大きく変わります。

役職者はステーション運営、スタッフ育成、稼働管理などのマネジメント業務を担うため、これらのスキルがそのまま給与に反映される点が特徴です。

役職を目指すためには、以下のように実績を積み重ね評価を高めていくことが大切です。

  • 記録や報告の精度を高める
  • 新人教育や調整を自発的におこなう
  • 主治医・多職種との連携を安定しておこなうなど

こうした経験は他法人でも評価されやすく、キャリアパスとして大きな価値を持つ選択肢となります。

訪問看護の専門資格を取る

専門資格の取得することでも収入アップを目指せます。特に皮膚・排泄ケア、在宅ケア、慢性疾患看護などの認定看護師は、在宅医療の需要拡大とともに活躍の場が広がっており、市場価値を高められる資格として注目されています。

もちろん資格を取ったからといって即座に給料が上がるわけではありませんが、専門性を客観的に示せるため、給与の交渉や役職登用で有利になるケースは多くあります。

また事業所によっては資格手当や研修支援が用意されていることもあり、キャリア形成の選択肢が広がる点もメリットです。

訪問看護の専門性を深めたい人にとって、資格取得は長期的な収入アップにつながる有効な手段だといえます。

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訪問看護師の給料に関するよくある質問

訪問看護師は本当に年収1,000万円を狙える?

結論として、常勤の訪問看護師として働くだけで年収1,000万円に到達することはほぼ不可能です。

訪問看護師の上限は高くても600万円から800万円程度で、役職手当を加えても大きく超えるケースは稀です。

一方、管理者として複数拠点を運営する場合や自ら訪問看護ステーションを開業した場合には年収1,000万円を狙えます。

訪問件数のノルマはどれくらい?給料にどう影響する?

訪問件数は1日平均4件から7件が一般的で、適正な件数で稼働が安定している職場ほど収益がぶれにくく、給与も安定します。

一方で、毎日8件以上を詰め込むようなノルマは移動・記録が追いつかないことで業務自体が破綻しやすく、最悪は休憩なし・記録がサービス残業になるおそれがあります。

そうした劣悪な労働環境を避けるためにも、無理のない訪問件数か必ず確認しましょう。

訪問看護は給料が高い分、働き方は大変?

訪問看護は1人で判断する場面が多く、急な症状変化への対応など責任の重さが負担になることもあります。

しかし研修体制が整っていたり、必要に応じて2人以上で同行訪問をおこなうステーションもあり、サポート体制は職場ごとに大きく異なります。

訪問看護が大変かどうかは給与ではなく、ステーションの運営方針や支援体制次第で大きく変わります。

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まとめ

訪問看護の給与は、件数手当・オンコール・役職など働き方によって大きく変動し、専門性を高めるほど待遇が上がりやすい特徴があります。

しかし年収1,000万円を目指す場合、常勤勤務だけでは実現が難しいため、自ら訪問看護ステーションを開業することが最も現実的な手段となります。

GLUGでは、これまで1,000社以上の就労継続支援A型事業所の開業・運営を支援してきた実績を持ち、そのノウハウをもとに訪問看護の立ち上げや運営サポートもおこなっています。 

訪問看護事業の開業をご検討中の方は、ぜひお問い合わせフォームからご相談ください。

担当者T.Aのイラスト

記事の監修者

T.A

社会福祉士、社会教育主事、サービス管理責任者

福祉系大学卒業後、社会福祉法人にて就労継続支援A型事業の立ち上げにジョイン。業務指導と併せて商品開発や営業に従事。また同法人にて放課後等デイサービス事業や相談支援事業、就労継続支援B型事業などの立ち上げをおこなう。
その後、特例子会社にてBPO業務管理や障がいのあるメンバーのマネジメントや採用に携わり、現在は福祉コンサルティング会社にて福祉事業のSVとしてクライアントの運営サポートをおこなっている。