障がい者福祉事業の立ち上げはどのような流れ?立ち上げにおすすめな業種も解説

2024年5月10日

障がい者福祉事業の立ち上げはどのような流れ?立ち上げにおすすめな業種も解説

障がい者の人数は年々増加し、それにともなって障害福祉サービスの需要も拡大しています。

そんななか、障害福祉事業への参入を検討するも、その制度の複雑さなどから開業を踏みとどまってしまう方も少なくないのではないでしょうか。

こちらの記事では障がい福祉事業を立ち上げるにはどのような流れを踏む必要があるのか、どのような障がい福祉事業の種類があるのかをご紹介します。

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障がい福祉事業とはそもそもどんなもの?

障がい福祉事業とは、障害や難病を持っている方がより良い日常生活や社会生活を送るための支援をするサービスです。

障がい者を支援するための各法律に基づいて提供されるもののため、事業者は「指定」を受けて事業を開業・継続していかなければなりません。

通常の開業と比べるとハードルが高いイメージを持たれがちですが、それだけの開業メリットがある事業であるともいえます。

ここでは、障がい福祉事業の概要とメリット、立ち上げのハードルの高さについてご紹介します。

障がい福祉事業とは?

障がい福祉事業のビジネスモデルは、法律に基づいて施設や自宅で障がい者への支援を実施することで、国からの報酬を受け取るかたちで成り立っています。

「介護」という言葉がつくサービスも多く、高齢者福祉事業と混在してしまいそうですが、根拠となる法律が異なり、障がい者福祉と高齢者福祉はまったくの別物として取り扱われます。

生活をするうえで困難がある方の自宅や施設での介護や移動のサポート、自立した生活をするための支援のほか、働くための能力を養うための支援など、領域ごとに細分化された各障がい福祉サービスが存在します。

基本的には障がい福祉事業はサービスの利用者が増えればそれだけ利益が出ますが、そのためにはより良い支援内容を実施し、体制を構築する必要があります。

各種法律やルールに基づいて運営する事業の性質上、ハードルは低くありませんが、開業して適切に運営できていれば、非常に安定しやすい事業であるともいえます。

障がい者の人数は2011年の時点から約1.5倍、人口の9.2%にあたる1,160万人に到達していますが、人口の20%の2,531万人まで増加する見立てとなっています。

各種の障がい福祉サービスの需要についても上がり続けると見込まれており、注目が集まっている事業モデルであるといえるでしょう。

障がい福祉事業の立ち上げには資格が必要?

障がい福祉事業というと開業に資格が必要なイメージがありますが、開業自体には資格は必要ありません。

ただし「人員配置基準」というルールを満たす必要があり、そのなかの「管理者」としては資格や実務経験が必要になる場合があります。

なかには別途必要になる有資格者が管理者との兼任が可能な場合もあるので、そこも含めて開業時の事業形態を検討しましょう。

障がい者福祉事業を立ち上げる流れは?

障がい福祉事業は国から指定を受ける特性上、必要な準備・流れが存在します。

また、市区町村の指定権者ごとにローカルルールなどもあるため、各項目について注意する必要があります。

一般的な開業とは異なるため、どのような流れになるのかは事前に確認しておきましょう。

ここでは障がい福祉事業を立ち上げる際の大まかな流れをご紹介します。

各関係機関への相談・確認

障がい福祉事業所を開業する際、法律や各ローカルルールに則った事業所を開業する必要があります。

そのため、事業形態に応じて以下のような各関係機関に開業要件を確認しなければなりません。

  • 消防署(消防法)
  • 建築安全センター・市区町村(障害者総合支援法、建築基準法、都市計画法、バリアフリー法)
  • 農業委員会(農地法)
  • 労働基準監督署(労働基準法)
  • 保健所(給食施設等の届け出)

ここの詳細確認があいまいに進んでしまった場合、後に開業ができなかったり、開業するにあたって不要な費用が嵩む可能性があります。

また、各機関で障がい福祉事業に対して理解や知見が浅い場合もあるため、各機関と連携して確認・相談を進める必要があるといえるでしょう。

指定権者への相談

障がい福祉事業を運営するにあたり、指定を認定する行政(指定権者)からの許可を得なければなりません。

指定権者にあたる申請先は県や市など、開業する事業形態や地域によって細かく異なるため、不明な場合は役所に直接確認しましょう。

地域によって障がい福祉事業の設立可能件数は限られており、かつ担当者が持っている障がい福祉についての課題や懸念も異なってきます。

設立を検討している事業の相談は勿論のこと、他の福祉事業の状況についても確認しておくと良いでしょう。

申請書類の作成・持ち込み・打合せ

指定を受けるためには複数の書類を作成し、指定を受けられるよう修正を重ねていく必要があります。

申請する事業の内容にも異なりますが、事業計画書や指定申請書、運営規定など、事業によっては40種以上の書類を作成・修正・提出する必要があります。

書類が通らない限りは事業の設立はできないため、ここに時間がかかってしまう場合が多いでしょう。

なかにはこれらの書類作成サポートを含めた開業支援をおこなってくれる会社も存在するので、不安な場合は相談しても良いでしょう。

書類審査・現地確認

作成した書類の審査をおこなうとともに、現地調査が実施されます。

物件の設備基準や運営基準を満たしているかという点を確認されますが、該当の障がい福祉事業所が存在しない場合、担当者が詳しくないこともあるため、事前に確認しておいた各機関からの見解などをエビデンスとして用意しておくと万全でしょう。

書類・現地確認ともに問題なければ、指定通知書が郵送され、指定を獲得できるようになります。

障がい福祉事業の立ち上げにおすすめな事業

障がい福祉事業には複数の種類がありますが、大きくは訓練等給付と介護給付に分類できます。

訓練等給付では日常生活や社会生活を送るうえで必要な訓練・支援を実施し、介護給付では生活上で必要になる介護支援を実施します。

厚生労働省「福祉サービスについて」より、障害福祉サービス等の体系

介護給付にあたるものでは訪問系サービス・日中活動系サービス・施設系サービスが該当し、訓練等給付にあたるものでは居住支援系・訓練系・就労系が該当します。

それぞれ内容やメリットが異なるため、自社に合う事業を検討しましょう。

ここではそれぞれの事業の概要やメリットをご紹介します。

就労継続支援A型

就労継続支援A型では、障害を持つ方を対象に働く機会を提供し、働くためのスキルや経験を得るための訓練・支援を実施します。

働くための活動(生産活動)は事業所によって様々あり、お弁当の盛り付けや仕込み、工場内の軽作業、デザイン・コーディングなどの生産活動をおこなう場合があります。

日本では労働人口が減少し続けるなか、就労継続支援A型事業ではサービスの利用者と雇用契約を結んで働いてもらうため、利益の創出と人手不足の解消の両軸を成立させられる可能性があります。

既存の事業との相乗効果が出せるうえ、他の福祉事業への展開もしやすい事業であるといえます。

就労継続支援B型

就労継続支援B型は働く機会を提供し訓練・支援するという点では就労継続支援A型と同様ですが、雇用契約を結ぶことなく働いてもらう事業となります。

雇用契約に基づかないため体調や病気の状況に合わせて働いてもらうことができ、地域によっては利用者が増えやすいモデルとなります。

また、就労継続支援B型では給与でなく「工賃」という事業所ごとに設定した報酬を支払うため、利益を出しやすいといえます。

就労移行支援

就労移行支援は障がい者が一般就労するための訓練・支援を実施します。

一見、就労継続支援と同じように感じますが、就労継続支援が働く場所であるといえるのに対し、就労移行支援は就職するためのサポートに特化しているといえます。

生活リズムの改善やビジネスマナーなどの基本的な点から、事業所ごとに設けた働くためのプログラムを実施し、企業の選定や紹介、選考書類の作成なども支援します。

就労移行支援では就職後6ヵ月以上働き続けた人数で報酬単位が変わりますが、就労移行支援事業所からの一般就労への移行割合は就労継続支援事業所の数値よりも高く、53.4%という実績があります。

厚生労働省「障害者の就労支援について③」より、サービス利用終了者に占める一般就労への移行者割合の推移

厚生労働省「障害者の就労支援について③」より、サービス利用終了者に占める一般就労への移行者割合の推移

就労定着支援

就労定着支援は各障がい福祉サービスを利用して一般就労に至った際、企業で安定して働き続けられるようサポートする事業です。

企業に訪問し、利用者本人や周囲の人間のほか、病院などの各機関と連携し、利用者が職場に定着できるよう支援します。

就労定着支援は2018年から始まった比較的新しい事業で、厚生労働省の発表によると事業所数もまだ1,421件と少ないなか、障がい者の定着を増やすために需要が上がっている事業といえます。

自立生活援助

自立生活援助は障がい者の一人暮らしを支援する事業で、定期的に訪問し、順調に生活できるようサポートするサービスです。

家事や金銭面に問題がないかなどを確認するほか、病院などの各機関と連携して問題なく生活を送れるよう支援します。

厚生労働省によると自立生活援助も件数としては395件しかなく、需要に対して事業所数が足りない状況となっています。

共同生活援助

共同生活援助は障がい者グループホームとも呼ばれ、共同生活をおこなうなかで生活能力を培う支援をする事業です。

食事や入浴、排せつなどの介護のほか、金銭管理などの日常生活面をサポートします。

不動産の賃貸と同様、障がい者グループホームはより多くの人に長く利用してもらうことが重要になりますが、不動産とは異なる点として、障害をお持ちの方は一度入居した場合に長く利用する傾向があります。

厚労省の調査では、平均入居期間で5年以上と答えた方は47.6%にものぼり、通常の賃貸よりも安定した経営が可能です。

先ほどご紹介した就労継続支援事業とも相性が良く、働く場所と住居を併せて提供することにより、両事業で安定して利益を上げられます。

居宅介護

居宅介護はホームヘルプとも呼ばれ、障がい者の自宅に訪問して入浴や排せつ、食事等の介護や家事のサポート、生活に関する相談に対応するなど、生活全般の支援をおこなう事業です。

高齢者向けの介護サービスである訪問介護と混在されがちですが、こちらは障害をお持ちの方を対象にサービスを提供します。

訪問系の事業となるため、初期費用などを抑えて開業することが可能です。

短期入所

短期入所は、障がい者の家族などの支援者が何かしらの理由でサポートができない際に短期間入所してもらい、介護・支援する事業で、ショートステイとも呼ばれます。

同じくショートステイと呼ばれるサービスで「短期入所生活介護」もありますが、こちらは高齢者向けのサービスとなります。

短期入所は障がい者グループホームなどとの相性が良く、相乗効果を出しやすい事業といえます。

施設入所支援

施設入所支援では、施設に入所する障がい者に対し、夜間や休日の入浴や排せつ、食事などの介護のほか、生活等に関する相談対応をおこないます。

基本的には夜間にサービスを提供しますが、デイサービスのような日中活動系サービスも一体的に提供します。

他の福祉サービスとの相性が良く、組み合わせてサービスを提供することで、それぞれの事業で利益を出すことが可能です。

放課後等デイサービス

放課後等デイサービスは障害をお持ちだったり、発達に特性のあるお子様に対し、日常生活や学習の支援・訓練を実施するほか、交流の場を設けるなどし、自立的な社会生活ができるようサポートする事業です。

これまで紹介してきた事業は障がい者総合支援法・障がい福祉法を根拠とするものでしたが、放課後等デイサービスは児童福祉法に基づきサービスを提供します。

事業所の利用は6歳から18歳までと限定されますが、他の福祉サービスを経営している場合、利用終了後もその福祉サービスの利用を促すことが可能なため、相乗効果を生みやすい事業です。

特に就労継続支援や障がい者グループホームを運営していれば、幼いころからサポートを続けられるため、安定して長期的に支援でき、結果的には利益を伸ばせる環境を作れるといえるでしょう。

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障害者福祉事業立ち上げのQ&A

障がい福祉サービスは制度が複雑なこともあり、開業にあたって様々な疑問が生じます。

ここでは、立ち上げにあたって多くの方から質問を寄せられる2つの内容についてご紹介します。

必要な資金はどのくらい?

障がい福祉サービスを立ち上げるにあたり必要になる資金は、事業の種類やエリア、施設規模によって大きく異なります。

資金は物件の取得や内装工事などの初期費用のほか、事業を運営していくための運転資金も確保する必要があります。

そのうえで目安をお伝えすると、訪問系のサービスの場合は100万円から300万円ほど、入所施設・通所施設などの場合は1,000万円から3,000万円ほどの資金が必要になります。

現在お住まいのエリアで開業したくても、資金計画を作成した際に必要資金が上がってしまうようであれば、開業しやすいエリアでの立ち上げを検討した方が良い場合もあるでしょう。

障がい福祉事業立ち上げに補助金は出る?

障がい福祉事業の立ち上げにおいても、一般の開業の際に利用するような補助金や助成金制度を活用することができます。

開業においては創業補助金、小規模事業者持続化補助金、事業再構築補助金などが該当します。

また、コンサルティングなどを利用して人材育成・教育を受ける場合は人材開発助成金なども利用できます。

開業後も採用や設備投資の点で使用できる補助金・助成金も多数ありますが、エリアによって有無が異なる場合もありますので、開業・運営する事業所の地域での補助金・助成金の制度を確認しておくと良いでしょう。

まとめ

障がい福祉事業とは障害や難病をお持ちの方がより良い日常生活・社会生活を送れるようサポートする様々な福祉サービスの総称です。

多数ある福祉サービスは経営するうえでそれぞれメリットが異なるため、自社の課題や運営の難易度によって開業するサービスを検討しましょう。

ただしいずれの場合も法律やルールに従って開業の手続きを踏む必要があるため、立ち上げにおいてはしっかりと確認・相談しながら計画的に進めましょう。

なお、GLUGでは障害をお持ちの方をサポートするため、就労継続支援A型事業所や障がい者グループホームの開業から運営まで一貫して支援しています。

これまで1,000社以上のご相談に対応し、法定雇用率を大きく改善した実績もありますので、ご興味がございましたらお気軽にご相談ください。

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