就労定着支援とは?利用期間・料金・支援内容を解説

2024年8月16日

就労定着支援は、障がいを持つ方の職場への定着を図る障がい福祉サービスですが、具体的にどういった支援をおこなっているのか分からない方もいるのではないでしょうか。

今回は就労定着支援の概要や利用条件、支援内容、指定の流れなどをご紹介していきます。

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就労定着支援とは?

就労定着支援(職場定着支援)とは、障がいや病気をお持ちの方が一般就労した職場で長く働き続けられるように支援する障がい福祉サービスです。

主に以下のサービスをおこなっています。

  • サービス利用者や企業との面談
  • 企業や関係機関との連絡調整、指導
  • サービス利用者の体調管理
  • 課題を解決するための支援

企業・サービス利用者の双方にとってメリットのあるサービスであり、一般就労したサービス利用者の早期離職を防ぐことにもつながります。

障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)で国によって定められており、「障がいの有無に関わらず、誰もが共生する社会の実現」を目的としています。

厚生労働省の「障害者の就労支援について」で説明されている通り、2021年時点では就労定着支援を提供している事業所は全国に1,351箇所と他の障がい福祉事業所よりも少ない傾向にあります。

これは就労定着支援が2018年に始まった比較的新しい障がい福祉サービスであることが主な理由としてあげられますが、まだ数が追いついておらず、大きな需要があります。

さらに詳しく就労定着支援を知りたい方は、厚生労働省の「就労定着支援に係る報酬・基準について」もあわせてご覧ください。

障がい者雇用の今

障がい者雇用促進法の前身となる身体障がい者雇用促進法は、1976年に強制力を持つようになってから企業の障がい者の雇用率は上昇傾向にあります。

一般企業に就労した障がい者の職場定着率は、以下のように障がいの種類によって大きな開きがあり、特に精神障がい者の職場定着率は他の障がい者よりも低くなっています。

出典:高齢・障害・求職者雇用支援機構「調査研究報告書 No.137障害者の就業状況等に関する調査研究

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就労移行支援と就労定着支援は何が違う?

就労定着支援と似た言葉に就労移行支援があり、違いが分からない方もいるかもしれません。

就労移行支援は、一般企業への就労を目指す障がい者に就労に必要な訓練と支援を提供する障がい福祉サービスです。

就労に必要なスキルを身に付けるための職業訓練や求人情報の紹介等をおこなう就職活動支援があり、一般企業への就労(一般就労)のサポートに特化しています。

その一方で、あくまでも就労定着支援は一般就労後の障がい者をサポートする福祉サービスです。

一般企業で働く中で生じた悩みに対するアドバイスや企業への指導、関係機関との連絡調整などをおこなっており、一般就労先で長く働けるように支援しています。

サービス利用者は就労移行支援 → 就労定着支援という流れで利用することが多い傾向にあります。

今回は簡易的な説明となりましたが、さらに詳しく就労移行支援を知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。

就労移行支援事業とは?メリットや利用方法について解説

就労定着支援の料金や期間などの条件は?

就労定着支援の対象者など利用する際の条件には、どういったものがあるのか気になる方もいるのではないでしょうか。

ここでは就労定着支援の主な利用条件をご紹介していきます。

支援対象者について

厚生労働省の「障害者の就労支援について」で説明されている通り、障がい福祉サービス「就労移行支援」「就労継続支援」「生活介護」「自立訓練」のいずれかの利用を経て、一般就労から6ヶ月経過した障がい者が就労定着支援の利用対象になります。

障がい福祉サービスの種類を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

障害福祉サービスとは?対象者や種類、受給者証についても解説

利用期間について

就労定着支援の利用期間は原則3年6ヶ月で、就労定着支援事業所では一般就労後6ヶ月を経過したタイミングから就労後3年6ヶ月目まで就労定着支援を受けることができます。

「就労移行支援」「就労継続支援」「生活介護」「自立訓練」を提供する事業所から一般就労した場合、就労後から最初の6ヶ月間はそれまで利用していた事業所で就労定着支援を受けられる場合があります。

3年6ヶ月経過後も就労定着支援の利用が必要な場合、障がい者就業・生活支援センターでサービスを受けることができます。

利用料金について

就労定着支援を含む障がい福祉サービスの利用料は、利用日数と本人の世帯所得によって月の負担上限額が設定されます。

厚生労働省「障害者の利用者負担」より負担の上限月額

出典:厚生労働省「障害者の利用者負担

1割自己負担、9割は行政が負担する仕組みで利用頻度が高い場合でも上限額を超えた金額を負担することはありません。

就労定着支援事業所のサービス利用者の平均負担額を示すデータは現時点ではありませんでしたが、就労定着支援対象者となる障がい福祉サービス利用者のほとんどが負担額0円に分類されています。

(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「厚生労働省 平成30年度障害者総合福祉推進事業 食事提供体制加算等に関する実態調査報告書

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就労定着支援の内容

就労定着支援では、一般就労した障がい者が職場で長く働き続けられるように主に以下のような支援をおこなっています。

  • サービス利用者や受け入れ先企業との面談
  • 医療機関など各種関係機関との連絡調整
  • サービス利用者の体調管理
  • 課題のヒアリング・解決に向けたアドバイス
  • サービス利用者の自宅や企業への訪問
  • 受け入れ先企業への指導など

一般就労後、遅刻・欠勤、企業側の障がい特性の理解不足、職場でうまくコミュニケーションがとれないなどのトラブルが生じやすい傾向にあり、解決できなければ最終的には離職につながってしまいます。

こうした課題を解決に導き、サービス利用者の職場への定着を支援するのが就労定着支援の役目です。

就労定着支援の実施事業者

就労定着支援の実施事業者は以下のように幅広いですが、就労継続支援A・B型事業所や生活介護事業所、自立訓練事業所の場合は実施している場合と実施していない場合があるため、あらかじめ問い合わせましょう。

  • 就労移行支援事業所
  • 障がい者職業センター
  • 障がい者就業・生活支援センター
  • 「職場支援員の配置又は委嘱助成金」に取り組む民間企業
  • 就労継続支援A・B型事業所
  • 生活介護事業所
  • 自立訓練事業所

一般就労した職場が「職場支援員の配置又は委嘱助成金」に取り組んでいる場合も就労定着支援を受けることができます。

職場支援員の配置又は委嘱助成金は、障がいを持つ従業員に長く働いてもらうために定着支援担当の職場支援員を配置もしくは対応を依頼した場合に助成金が支給される制度です。

詳しく職場支援員の配置又は委嘱助成金を知りたい方は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の「障害者介助等助成金」をご覧ください。

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就労定着支援の就職者側のメリット

一般就労後は慣れない環境で働く中で悩みが生じる傾向にありますが、就労定着支援を活用すれば心強い相談先ができるため、安心して働き続けることができます。

  • 生活リズムを整えられる
  • 悩み事が解消しやすい
  • 働くうえでの自分の改善点が分かる
  • 職場と友好的な関係を築きやすくなる
  • 会社に伝えづらいことも相談できるなど

就労定着支援の企業側のメリット

同じ障がいを持つ方でも度合いは人それぞれであり、配慮の内容も大きく変わりますが、就労定着支援を活用すれば必要な配慮が分かるため、適切な対応を取りやすくなります。

  • 職場への定着を促進できる
  • 障がい特性の理解を深められる
  • 障がい者雇用のノウハウを積み上げられる
  • 障がい福祉の不明点が解消しやすい
  • 関係機関とスムーズに連携できるようになる

就労定着支援の実例

実際に就労定着支援がどのようにおこなわれているのか気になる方もいるのではないでしょうか。

就労定着支援の実例は厚生労働省の「就労移行支援・就労定着支援 事例集」にまとめられています。

ここでは同事例集の中から2点、就労定着支援の実例をご紹介していきます。

実例①社会福祉法人 加島友愛会

加島友愛会では就労継続支援B型・自立訓練・就労移行支援・就労定着支援を包括的におこなっています。

就労定着支援では、サービス利用者を企業に定着させることを目的にしているため、特に利用期限は設けておらず、訪問や面談によって徹底的な支援をしています。

また就労後の目標を定めており、企業・サービス利用者・加島友愛会担当者の3者で達成度を確認・追うことで定着の効果を高めています。

実例②NPO法人 大阪精神障害者就労支援ネットワーク

大阪精神障害者就労支援ネットワークは就労継続支援A型事業と就労定着支援事業を展開しています。

定着支援では、訪問や面談のほか、サービス利用者が企業に馴染みやすくなるように就労前・就労後のタイミングで、同法人が就労先の企業にサービス利用者の特徴や必要な配慮などの情報提供をおこなっています。

また企業担当者だけでなく、サービス利用者の関連部署全体に説明会もおこなうことで企業側の理解促進に努めています。

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就労定着支援として指定を受けるための申請方法は?

就労定着支援を提供するためには、就労定着支援事業所として指定を受ける必要があります。

指定申請できる事業者の条件は、以下の通りです。

  • 就労継続支援A・B型・生活介護・自立訓練のいずれかの指定を受けている
  • 過去3年間で平均1人以上を一般就労につなげている

ここでは就労定着支援の必要要件を満たしている場合の指定申請の流れをご紹介していきます。

事前相談をする

就労定着支援事業所としての指定を受けるために、まずは行政の障がい者福祉課窓口に事前相談しましょう。

指定を受けるまでに事前相談から2,3ヶ月はかかるため、就労定着支援に関する事業計画書を用意したうえで開業から逆算したタイミングで、事前相談の予約を取ることが望ましいです。

事前相談の予約や事業計画の作成が遅れると、就労定着支援の開始も後ろ倒しになってしまうため、計画的な行動が欠かせません。

書類提出をし、審査を受ける

事前相談後は、指定申請書などの必要書類に記入・提出します。

行政のHPに各種必要書類のフォーマットが用意されているため、一式をダウンロードするようにしましょう。

書類提出後、行政が以下の人員基準・設備基準・運営基準を満たしているかどうかを審査し、問題がなければ就労定着支援事業者として指定されます。

【人員配置基準(人員基準)】
有資格者の職員の配置や人数など人員に関する基準です。

【設備基準】
事業所に必要な設備や条件に関する基準です。

【運営基準】
事業所を運営するうえで守らなければならない基準です。

書類に記入漏れ・ミスがあったり、基準に達していなかったりする場合、不合格になるため、不安な方は障がい福祉を専門とするコンサルタントに相談するのも良いでしょう。

新規指定事業者説明会に参加

無事に就労定着支援事業所として指定を受けた後は、新規指定事業者説明会に参加する必要があります。

対象者はあくまでも新規指定事業者であるものの、隔月で開催されており、事業内容の変更手続きなど事業所運営に欠かせない重要な内容を説明してもらえます。

事業所の運営で発生しやすい不明点もその場で質問できるため、効率的な運営をおこないやすくなります。

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まとめ

企業の障がい者雇用率は上昇傾向にあるものの、最終的に離職してしまう障がいを持つ方も確認されています。

企業側の配慮が不十分、障がいを持つ方が職場に馴染めなかったなど離職の原因はさまざまですが、就労定着支援ではそうした課題を解消・軽減することで就労先への定着を図っています。

就労定着支援は、サービス利用者と企業の両者にとってメリットが大きい福祉サービスであり、早期離職を防ぐことができます。

就労定着支援は2018年に始まったばかりの比較的新しい障がい福祉サービスであり、その事業所数はほかのサービスを提供する事業所よりも少ない傾向にあります。

就労移行支援などの障がい福祉サービスに取り組んでいる事業所が就労定着支援を展開するケースも増えてきていますが、それでもまだ数は追いついていません。

大きな需要がある障がい福祉サービスの一つなので、これから障がい福祉事業の開業を検討している方は就労定着支援も視野に入れると良いでしょう。

なお、GLUGでは就労継続支援A型事業の開業・運営をトータルでサポートするサービスを提供しています。

就労継続支援A型事業について詳しく知りたい方はこちらのページもご確認ください。

担当者T.Aのイラスト

記事の監修者

T.A

社会福祉士、社会教育主事、サービス管理責任者

福祉系大学卒業後、社会福祉法人にて就労継続支援A型事業の立ち上げにジョイン。業務指導と併せて商品開発や営業に従事。また同法人にて放課後等デイサービス事業や相談支援事業、就労継続支援B型事業などの立ち上げをおこなう。
その後、特例子会社にてBPO業務管理や障がいのあるメンバーのマネジメントや採用に携わり、現在は福祉コンサルティング会社にて福祉事業のSVとしてクライアントの運営サポートをおこなっている。