就労継続支援A型事業所は儲かる?収入源や助成金の使い方と経営のポイントを解説

2024年5月17日

就労継続支援A型事業所は儲かる?収入源や助成金の使い方と経営のポイントを解説

福祉事業である就労継続支援A型について、障害や難病を持つ方の増加によって需要が増しているなか、どの程度の利益が出るものなのか気になる方もいるでしょう。

特にこれから就労継続支援A型事業所の開業を検討している場合、具体的な利益のイメージをつかんでおきたいと考えるはずです。

この記事では、就労継続支援A型事業所が儲かるかどうかや主な収入源、運営していくためのポイントなどをご紹介します。

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就労継続支援A型事業所は儲かる?収入源は?

就労継続支援A型事業は障害や難病をお持ちの方に働く機会と自立のための支援を提供し、対価として国から給付金を受け取るビジネスです。

適切に運営できていれば大きな利益を安定して出すことも可能ですが、実際の傾向はどうでしょうか。

ここでは就労継続支援A型事業所が儲かるかどうかの結論、基本報酬と報酬加算の概要をご紹介します。

A型事業所の収益モデルを知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

就労継続支援A型の収益モデルは?開業方法や経営のポイントを解説

収支差の結論は?赤字施設もある?

厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果」より、就労継続支援A型1施設・事業所当たりの収支額、収支等の科目

厚生労働省の調査によれば、就労継続支援A型の年間収入は4,495万円、支出は4,366万円で、収支差は約129万円です。

厚生労働省「就労継続支援A型に係る報酬・基準について≪論点等≫」より、「生産活動」のスコア

また就労継続支援A型事業では生産活動による売上からサービス利用者の賃金を払わなければなりませんが、厚生労働省の調査によれば、43.4%もの事業所では売上が未達となっています。

あくまでも調査対象になった作業所の有効な回答に基づくデータであるものの、全体の傾向としては6割が黒字、4割が赤字だと考えられます。

基本報酬は?

就労継続支援A型の基本報酬は、以下3つの基準によって評価され、主な金額が決まります。

【定員区分】
A型事業所を同時に利用できるサービス利用者の人数のことで、人数によって5段階に分類されます。

【人員配置区分】
前年度の平均サービス利用者数に対する職業指導員・生活支援員を合計した人数です。

合計人数の割合によって、「就労継続支援A型サービス費Ⅰ(7.5:1)」「就労継続支援A型サービス費Ⅱ(10:1)」に分類されます。

【評価点(スコア)】
「労働時間」「生産活動」「多様な働き方」「支援力向上」「地域連携活動」「経営改善計画」「利用者の知識・能力向上」を合計した数値が評価として算出されます。

これらの基準はサービス利用者に対してどれほど適切な支援をおこなえる体制を構築しているかという点で設けられており、基本報酬を上げる取り組みがA型事業において儲けるためのポイントとなります。

特に、評価点を可能な限り上げられるよう、多くのA型事業所が日々努力しています。

報酬加算の算定は?

報酬加算は、一定の条件を満たすことで基本報酬に加算される報酬のことです。

サービス利用者やA型事業所の対応によって、算定できる種類は異なるほか、要件を満たした場合は迅速に申請が必要な報酬加算もあります。

加算は多岐にわたり、また、年度によって変わることもありますが、今回は主な報酬加算として以下をご紹介します。

【初期加算】
サービスを新規で利用する方がいた場合、その利用開始から30日間、利用日に応じて基本報酬に上乗せできる加算です。

【送迎加算】
サービス利用者の自宅や最寄り駅への送迎によって得られる加算です。

ⅠとⅡの2種類があり、1回の送迎で平均10人以上(定員20人未満は定員の50%以上)を送迎できている場合はⅠ、送迎回数が週3回以上の場合はⅡに分類されます。

両方を満たす場合、Ⅰに分類されます。

【食事提供体制加算】
収入が一定以下で、個別支援計画などで対象となるサービス利用者に食事を提供した場合に得られる加算です。

【福祉専門職員配置等加算】
Ⅰ〜Ⅲの種類があり、社会福祉士や作業療法士などの資格を持つ常勤の生活支援員・職業指導員の割合に応じて分類・加算されます。

【賃金向上達成指導員配置加算】
賃金向上計画、または経営改善計画を策定する事業所が賃金向上に取り組む常勤の人員を1人以上配置、もしくはサービス利用者のキャリアアップにつながる対応をした場合に加算されます。

【欠席時対応加算】
サービス利用者の急病などによる利用キャンセルに対して、連絡や相談などの支援をおこなった場合、1人あたり最大月4回まで受け取れる加算です。

【訪問支援特別加算】
3ヶ月以上継続して通っていたサービス利用者が5日間以上休んだ際、職員がサービス利用者の自宅に訪問・相談対応などをした場合に得られる加算です。

訪問への同意を得ていることや、個別支援計画で定めていることなどが加算の条件となります。

【就労移行連携加算】
サービス利用者が就労移行支援の利用を始める際に、就労移行支援事業所との連絡調整や、特定相談支援事業所への情報提供をおこなった場合に受け取れる加算です。

【就労移行支援体制加算】
サービス利用者が一般企業に就労し、就労先での雇用が6ヶ月を達した場合に得られる加算です。

基本報酬によって、Ⅰ・Ⅱに分類されます

助成金目当てで運営して儲かるの?

結論からいうと、助成金目当てでは儲け続けることは難しいでしょう。

助成金目当てだけで運営している就労継続支援A型事業所は、自然とサービス利用者が集まらなくなり、儲けることが難しくなります。

その一方で、助成金・補助金を事業所の運営やサービス利用者の支援に上手く活用できれば、儲けていくことができます。

ここでは、助成金・補助金の主な種類や不正をおこなった場合のリスク、活用例などをご紹介していきます。

助成金・補助金はいくらもらえる?

就労継続支援A型で活用できる助成金・補助金の種類は多岐にわたりますが、代表的なものは以下の2種類です。

【訓練等給付費】
サービス利用者に必要な支援やトレーニングの報酬として、サービス利用者の人数に応じて国から支払われます。

【特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)】
高齢や障害、難病などが理由となり、一般企業での就労が難しい方を雇用した場合に支給される助成金です。

訓練等給付費の金額は、基本報酬によって前後しますが、サービス利用者1人あたり月額12~14万円となります。

事業所のサービス利用者が20人の場合、毎月240万円~280万円を国から受け取ることができます。

さらに、施設外就労なども実施することで利用者の人数を増やし、基本報酬を上げるとともに様々な加算を取れば、年間4,000万円以上の経常利益を出すことも可能です。

事例はこちら

厚生労働省「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案概要(改正入管法の施行に伴う改正) 」より、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給額

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象労働者・助成額・助成期間は、上記の通りです。

ほとんどの就労継続支援A型事業所がサービス利用者に6時間未満の短時間労働で任せている傾向があり、2年間で80万円が支給されます。

一般企業への就労(一般就労)を目指しているなどの理由で6時間以上の労働をしているサービス利用者がいれば、最大で240万円が支給される仕組みです。

訓練等給付費と特定求職者雇用開発助成金の注意点としては、共に自動的に受け取れる給付金・助成金ではありません。

それぞれあらかじめ国に申請しなければならないため、受給したい方は忘れないようにしましょう。

不正の手口として使われることがある?

以下のような手口によって、不正受給といった犯罪に手を染めるA型事業所も一部で確認されています。

  • サービス利用者の利用日の水増し
  • 職業指導員など人員配置の偽装
  • 実体のない業務の偽装報告

不正受給が発覚した場合、加算額を上乗せした返還請求はもちろん、悪質であれば指定取り消し・運営停止処分もあり得ます。

兵庫県の某B型事業所では、250万円におよぶ給付費の悪質な不正受給が発覚し、逮捕者が出たため、全国的な報道となりました。

悪意のない書類への記入ミスが原因でも、不正受給となっていた場合は返還請求や行政処分につながるため、書類の記載ミスが起きないようにすることが大切です。

また特定求職者雇用開発助成金を悪用し、受給期間終了と同時にサービス利用者を解雇、もしくはA型事業所の閉鎖を繰り返し、利益だけを追求するA型事業所もありました。

ただし、特定求職者雇用開発助成金を悪用していたA型事業所に関しては、ひと昔前の話です。

サービス利用者を守るために行政がルールを厳格化したことで、現在は悪質なA型事業所の数が大きく減少しました。

お金は何に使えるのか?

受給した給付金や助成金は、職業指導員・生活支援員などの人件費、光熱費といったA型事業所の運営に必要な経費に使うことができます。

厚生労働省の「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫」で説明されているように、給付金・助成金からサービス利用者の賃金を支払うことは原則できません。

サービス利用者の賃金は、サービス利用者に任せている仕事(生産活動)の売上から捻出する必要があります。

助成金・補助金は、サービス利用者の利用日数に応じて主な受給額が決まりますが、それでもA型事業所においては大きな収入源です。

A型事業所から「もっと通って欲しい」「さらに利用者を増やしたい」という声を聞く機会があるかもしれません。

これは助成金・補助金目当てということではなく、A型事業所の運営や支援を続けていくうえで必要になる資金を集めたいためです。

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就労継続支援A型を運営するときの注意点

「助成金・補助金で運営できるなら安心」と考えている方もいるかもしれませんが、就労継続支援A型事業所を運営していくうえで、その他にも注意するべき点があります。

ここでは就労継続支援A型事業所の運営に関する注意点をご紹介します。

経営時の注意点や難しさ

サービス利用者の支援をおこなう職員の採用に難航しているA型事業所が多い傾向があります。

特に常勤が必須となるサービス管理責任者が見つからないことで、開業が進まなかったり、開業後も減算を受けてしまうA型事業所も珍しくありません。

サービス管理責任者は、支援の総合的な管理や職員の指導、サービス利用者のケアをおこなう役割を担っています。

しかし、サービス管理責任者を探す競合やグループホームが増加していることで、採用が長期にわたる場合もあります。

もちろん事業所の考え方や雰囲気などとの相性もあり、せっかくサービス管理責任者を見つけても採用に至るとは限りません。

そうした背景から、有償の人材紹介サービスを使ってサービス管理責任者を採用するA型事業所が増えています。

生産活動会計が赤字になると危険!

前述したように、サービス利用者に支払う賃金は、仕事(生産活動)による売上から支払わなくてはなりません。

最低賃金の増加に伴って、サービス利用者賃金も上昇傾向にありますが、常に売上が賃金支払い額を上回っている状態を維持する必要があります。

仕事の売上(生産活動会計)が赤字の状態が続いてしまうと、サービス利用者への賃金支払いが難航し、最終的には自治体から指定取り消しを受けてしまう場合もあります。

低単価の仕事だけでは赤字になってしまうおそれがあるため、請負などによって高単価の仕事も継続していくことが大切です。

就労継続支援A型の運営のポイント

およそ半数の就労継続支援A型事業所は黒字となっていますが、同様に成功するためにはいくつかのポイントを把握しておく必要があります。

ここでは就労継続支援A型事業所を運営するうえで役立つ主なポイントをご紹介していきます。

就労への移行を促進すること

近年はサービス利用者を一般就労に導いたA型事業所が高く評価されている傾向があります。

一般企業でも通用するスキルを身に付けたサービス利用者を一般就労させたり、就労移行支援事業所へ案内したりすることで、就労移行連携加算・就労移行支援体制加算が基本報酬に上乗せされます。

A型事業所の経営を安定させるためにも、積極的にサービス利用者に一般就労を促すようにするといいでしょう。

ただし、一般就労後の6ヶ月はサービス利用者が就労先に在籍していなければ、加算対象になりません。

一般就労させれば支援は終わりではなく、サービス利用者が就労先で長く定着できるように支援を続けていくことも大切です。

労働環境や職場の環境を適正化すること

A型事業所の経営を成功させるために、職場環境を適正化し、働きやすい環境作りをしましょう。

健全な職場環境を実現できれば、サービス利用者がA型事業所に定着しやすくなるだけでなく、おのずと集客にもつながるため、安定した基本報酬を期待できます。

またサービス利用者の送迎や賃金改善の取り組みをおこなうことで、サービス利用者の満足度を上げつつ、加算につなげることもできます。

基本報酬を適切に上げること

現在の基本報酬は、前年度の評価に基づいて算出されているため、日頃から基本報酬を上げるための工夫をしていきましょう。

基本報酬の大きな比重を占める評価点(スコア)の中の7項目から、事業所の状況に応じた対応を取り入れることで、基本報酬を上げていくことができます。

また書類への記入ミスや申請漏れがあるとスコアが減ってしまうため、ミスの防止も同時に徹底するといいでしょう。

まとめ

国から受給できる「基本報酬」とサービス利用者の仕事によって発生する「生産活動の売上」の2種類が就労継続支援A型事業所の収入源となります。

赤字のA型事業所も4割以上ありますが、基本報酬を上げる取り組みと生産活動の売上を伸ばす工夫をすれば大きな利益を出すことも可能です。

日頃から基本報酬を上げる取り組みに注力する必要がありますが、書類への記入ミスで基本報酬のスコアが下がらないようにしていきましょう。

なお、GLUGでは障害をお持ちの方がより活躍できる社会を実現するため、障害福祉の開業から経営改善までトータルで支援しています。

業界未経験からの参入では扱いが難しい国へ提出する書類も徹底的にサポートしているほか、基本報酬を上げるための支援もおこなっており、なかには年間4,000万円以上の経常利益を出している事業所も存在します。

無料相談のほか、事業所の見学や取組シミュレーションのご案内もおこなっておりますので、少しでもご興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。

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