就労継続支援B型のメリットとデメリットとは?利用者側・事業所側の視点で解説

2024年5月15日

就労継続支援B型は働くことを通じてサービス利用者の自立を目指す福祉サービスの一種ですが、就労継続支援B型を知ったばかりという方のなかには、具体的にどのようなサービスなのか分からないと考えている方もいるでしょう。

福祉は言葉や制度が難解なこともあり、開業を検討したりサービスを利用する際にハードルが高く感じてしまう方が多いのは事実です。

そこで今回は就労継続支援B型の基礎知識や、事業所側・サービス利用者側から見たメリットとデメリット、収支モデルなどをご紹介していきます。

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就労継続支援B型とは

就労継続支援B型とは、障がいや病気が理由で一般企業での就労が難しい方を対象とした福祉サービスのことです。

対象となるサービス利用者に働く場所を提供し、日々の労働を通して、自立した生活に向けた支援・訓練をおこないます。

障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)で国によって定められた福祉サービスの1つであり、「障がいの有無に関わらず、お互いを尊重しながら、共生する社会の実現」を目的としています。

内閣府が発表する「令和4年度障害者試作の概状(令和5年版障害者白書)」で説明されているとおり、障がい者の人数は増え続けており、現在は約1,160.2万人にものぼります。

しかし、厚生労働省の「障害者の就労支援について」で発表されているように、B型事業所の設置数も増加傾向にあるものの、それでも13,828箇所しかない状況であり、大きな需要があるサービスだといえます。

対象者

就労継続支援B型の対象者は、身体障害・知的障害・発達障害を含む精神障害・難病(令和6年4月より369疾病が対象)を持っている方です。

またサービスを利用するためには、主治医から了解を得て、以下いずれかの条件を満たす必要があります。

  1. 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
  2. 50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
  3. ①及び②に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者
    出典:厚生労働省「障害者の就労支援について」

上記のように、障害の有無にかかわらず、高齢や体力が理由で一般企業での就労が難しくなった方もB型事業所を利用することができます。

高齢者も対象としていることから利用年齢の上限は設けられておらず、更に通常は18歳以上を対象としていますが、18歳未満でも児童相談所長が市町村長に通知した場合は15歳以上から利用できます。

障がい者手帳は必須ではありませんが、利用するためには自治体に障害福祉サービス受給者証(通称:受給者証)を申請・発行しなければなりません。

申請書への記入だけでなく、主治医の診断書なども必要になるため、就労継続支援B型を利用したい方は、主治医に相談すると効率的に対応できます。

ただし、自治体によって就労継続支援B型の利用条件が異なる場合があるため、事前に自治体の障がい福祉窓口に確認すると良いでしょう。

仕事内容

就労継続支援B型の仕事内容は事業所ごとに大きく異なります。

そのため、どのような仕事を提供しているかは事前に確認しておく必要があります。

厚生労働省によって調査・発表されている就労継続支援B型の仕事内容の割合は、以下のとおりです。

厚生労働省「就労系障害福祉サービスにおける経営実態等調査」より、実施している生産活動の内容

就労継続支援A型と異なり、就労継続支援B型では雇用契約を結ぶことが難しい方、つまり比較的障害の度合いが重い方や、高齢など体力が理由で就労が難しい方を対象としているため、簡易的な業務が多い傾向にあります。

具体的な例をあげると、以下のとおりです。

  • 袋詰めやラベル貼りなどの内職
  • 備品整理や検品などの軽作業
  • PCを使ったデータ入力
  • 農作業
  • 洗車やハウスクリーニングなど

作業日数

就労継続支援B型は雇用契約に基づく労働が難しい方も働けるように整備された制度のため、サービス利用者の事情や体力を優先した柔軟な作業日数・時間を認める事業所が多い傾向にあります。

そのため、サービス利用者は体調面や精神面を優先しながら、無理のないペースで仕事を続けていくことができます。

ただし、サービス利用者の生活リズムを整えることなどを目的として、シフト制を採用しているB型事業所もあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。

工賃(給料)

就労継続支援B型では、雇用契約を結ばないため給与の規定は設けておらず、その代わりに仕事に対する対価としての「工賃」が支払われます。

工賃は最低賃金を保障する義務がないため、最低賃金以下の工賃が支払われていることが多い傾向にあります。

厚生労働省の「障害者の就労支援対策の状況」で発表されているように、令和4年度における就労継続B型の全国平均工賃は、以下の通りです。

月額:17,031円
時給(時間額):243円

現在は平均工賃が最低賃金以下であるものの、各自治体で工賃を上げるための取り組みがおこなわれており、平均工賃は上昇し続けています。

就労継続支援A型との違い

就労継続支援には2種類あり、B型以外にもA型があります。

就労継続支援A型もサービス利用者の自立した生活に向けた支援をおこなうという点ではB型と同じですが、雇用契約を結ぶという点で大きく異なります。

あくまでもA型は、一般企業での就労は難しくても、支援をすれば雇用契約に基づく労働ができる方が対象となります。

また、サービス利用者と雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の給与が保障されているのが特徴です。

ただし雇用契約に基づく労働が求められるため、B型よりもサービス利用者の自由度は低く、相談はできるものの、ある程度は勤務時間が固定されている傾向があります。

今回は簡潔に説明しましたが、さらに詳しくA型とB型の違いを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

就労継続支援とは?A型・B型の違いや利用方法を解説

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就労継続支援B型のメリットとデメリット

ここまで就労継続支援B型の概要を説明しましたが、B型事業所の開業を検討している経営者や利用を検討しているサービス利用者は、どういったメリット・デメリットがあるのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。

ここでは事業所とサービス利用者、それぞれの就労継続支援B型のメリット・デメリットをご紹介します。

事業所にとってのメリットとデメリット

事業所にとってのメリットは、高齢者もサービス利用者に含まれるため、今後も需要の増加を見込めるビジネスであることです。

団塊世代の方が75歳以上の後期高齢者になる2025年問題によって、前例のない高齢化社会が訪れるとされており、内閣府の「高齢化の状況」によれば、2025年には75歳以上が2,180万人、65~74歳が1,497万人になると見込まれています。

前述したように、障がい者の人数も増加傾向にあるため、需要が上がり続ける市場で事業運営ができるといえます。

デメリットとしては、需要に伴う競合の参入や、重なる報酬改定(工賃改定)によって、サービス利用者に選ばれ続ける工夫を考えなければならないことです。

単にB型事業所を開業するだけでは生き残れない可能性が高いので、利益を追求するとともに、サービス利用者が通いたいと思えるような事業所を目指していく必要があります。

福祉業界未経験でB型事業所の開業を検討している場合は、福祉業界ならではのノウハウを活用できるフランチャイズに加盟することも1つの手です。

なお、GLUGでは福祉事業の開業・運営をトータルでサポートするサービスを提供しています。

福祉事業やGLUGのサポートについて詳しく知りたい方はこちらのページもご確認ください。

利用者にとってのメリットとデメリット

サービス利用者にとっての最大のメリットは、雇用契約を結ばないため、自由な働き方ができることです。

利用者は仕事よりも体調面・精神面を優先することができるため、「一時間だけ働く」「働くのは週1回」といった無理のないペースで働けます。

もちろん、短時間の利用だけでなく、生活の自立を目的として、徐々に作業日数・時間を増やしていく働き方をする方もいます。

サービス利用者の自由度が高い反面、雇用契約を結ばないことはデメリットにもなり、最低賃金以上の工賃が保証されていません。

工賃を目的とする場合、このデメリットを無視できない方もいるかもしれません。

しかし、工賃をメインの目的とするのではなく、自立した生活を送るためのトレーニングの場だと捉えると良いでしょう。

就労継続支援B型の収支モデル

就労継続支援B型事業所の売上には、以下の2種類があります。

【障害福祉サービスとしての報酬】
障害福祉サービスの提供で得られる国からの報酬金です。

報酬の計算方法は「平均工賃月額に応じた報酬体系」「利用者の就労や生産活動への参加等による一律評価」のいずれかから選択します。

【生産活動による売上】
サービス利用者が生産活動(事業所の仕事)によって得た売上です。

経費を除く生産活動による売上全額を工賃として支払う必要があるため、基本的に余剰金は発生しません。

ただし、将来にわたり安定的に生産活動や工賃を供給し、円滑に就労支援事業を継続させるために、一定条件のもとで積立金を計上することも認められています。

B型事業所で支払う工賃は事業所ごとに設定できますが、国からの報酬単価は工賃が高く設定されている事業所の方が高くなる仕組みとなっているため、工賃は最低でも月1万円以上に設定しましょう。

また、サービス利用者を集めることで生産活動による売上の増加も図れるため、日頃から積極的にサービス利用者を集めるようにすると良いでしょう。

月額の収支モデルでは、厚生労働省の「生活介護事業所・就労継続支援B型事業所実践事例集」で以下のように紹介されています。

定員20名:利用者16名(稼働率80%)
平均工賃:60,000円
稼働日数:22日
地域区分:4級地
作業収益:220万円
人件費:110万円
家賃等:50万円

4級地の場合、1単位当たりの単価は10.68円です。

1人当たりの基本報酬日額は1日7,497円(702単位×10.68円)となり、合計の月額基本報酬は263万8,944円(7,497円×16人×22日)となります。

この月額基本報酬に1ヶ月の作業収益220万円を加えると、483万8,944円となります。

ただし、工賃・人件費・家賃などを除いた227万8,944円が収益となるため、利益率は47.1%となります。

今回は、簡単な説明となりましたが、さらに詳しく報酬や加算の概要、その他の収支モデルを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

就労継続支援B型事業所は儲かる?収支モデルや収益を上げるコツを解説

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まとめ

就労継続支援B型は、事業者側とサービス利用者側の双方にとってメリットのある福祉サービスの一種であり、少子高齢化などによって、今後も需要が拡大していくと推測されています。

サービス利用者の場合は、工賃目的で考えるのではなく、あくまでも自立した生活をトレーニングする場だと捉えて、無理のないペースで自身に合うB型事業所に通うと良いでしょう。

事業者側の場合は、高工賃を実現しつつ、サービス利用者にとっても居心地がいい場所にしていくことが大切であり、それが収益にもつながります。

急増する需要に応えられるほか、社会貢献にもつながる注目の福祉サービスだといえるため、この機会に立ち上げを検討しましょう。

なお、GLUGでは福祉事業の開業・運営をトータルでサポートするサービスを提供しています。

福祉事業やGLUGのサポートについて詳しく知りたい方はこちらのページもご確認ください。

担当者T.Aのイラスト

記事の監修者

T.A

社会福祉士、社会教育主事、サービス管理責任者

福祉系大学卒業後、社会福祉法人にて就労継続支援A型事業の立ち上げにジョイン。業務指導と併せて商品開発や営業に従事。また同法人にて放課後等デイサービス事業や相談支援事業、就労継続支援B型事業などの立ち上げをおこなう。
その後、特例子会社にてBPO業務管理や障がいのあるメンバーのマネジメントや採用に携わり、現在は福祉コンサルティング会社にて福祉事業のSVとしてクライアントの運営サポートをおこなっている。