障害者雇用は障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)によって、障害者雇用が対象企業に義務付けられており、法定雇用率以上を維持しなければなりません。
段階的に法定雇用率は引き上げられており、いまは対象外でも将来的には義務の対象となる可能性が高いため、障害者雇用の内容はどの企業も把握しておくべきですが、これから準備に取り組む場合は法定雇用率をどのように考えれば良いのでしょうか。
今回は法定雇用率の考え方やカウント方法、法定雇用率に達しない場合のペナルティ、法定雇用率を維持するための対策などを紹介していきます。
なお、GLUGでは企業の障害者雇用に繋がる福祉サービスを展開しています。
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障害者雇用率制度とはなにか
障害者雇用率制度とは、障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)によって、対象となる企業は一定以上の割合で障害を持つ方を雇用することを義務付けている制度のことです。
今後も法定雇用率の改定などがおこなわれることが決定しており、いまは対象外の場合でも制度の改正によって障害者雇用を義務付けられる可能性があるため、どのような企業の場合も障害者雇用促進法の内容を把握しておくことが望ましいです。
さらに詳しく障害者雇用率制度を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
障害者雇用とは?条件や助成金、支援制度を解説
対象となる企業
障害者雇用促進法で障害者雇用を義務付けられている企業は、常時雇用する従業員が40人以上の場合であり、法定雇用率2.5%以上(2024年10月現在)を守らなければなりません。
2026年7月には法定雇用率2.7%以上(従業員37.5人以上を雇用している企業)に改定することが計画されており、新たに対象となる企業は現在の常時雇用の人数を把握したうえで準備しておく必要があります。
常時雇用の従業員のカウント方法については後述します。
除外率制度について
除外率制度とは、免許・資格や必要もしくは安全性に懸念点があるなど職業の性質上、障害者雇用が一般的に難しいと考えられる業種に適用される制度で、除外率に応じた障害者雇用の人数が差し引かれる仕組みです。
厚生労働省の「障害者雇用率制度・納付金制度について関係資料」で説明されているとおり、ノーマライゼーションに基づき、除外率制度は廃止する方向で段階的に縮小されており、完全に廃止されるまでの間は業種ごとに除外率が設定されています。
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法定雇用率とはなにか
法定雇用率とは、対象となる企業に義務付けられている障害者雇用の人数の割合のことであり、2024年10月現在は以下のように法定雇用率が課せられています。
- 民間企業の場合:法定雇用率2.5%以上
- 都道府県等の教育委員会:法定雇用率2.7%以上
- 国・地方公共団体:法定雇用率2.8%以上
法定雇用率は現在雇用されている障害者数と失業中の障害者数に基づいて、定期的に法定雇用率は見直されており、2026年7月には2.7%以上(民間企業の場合)に引き上げられることが決定しています。
企業内の雇用義務数と実雇用率の算定方法
ここまで障害者雇用率制度と法定雇用率の概要を説明しましたが、常時雇用には定義があり、正確にカウントできなければ「実は法定雇用率に達していなかった」「違反していないことに気付かなかった」などのトラブルが発生するおそれがあります。
ここでは雇用義務数や実雇用率の算定方法などを解説していきます。
雇用義務数の算定方法
障害者の雇用義務数は、以下の計算式で算定します。
雇用義務数=常用雇用の従業員数×法定雇用率2.5%
小数点以下は切り捨てとなり、単純計算をすると常時雇用する従業員数40人の場合は障害を持つ方1人を雇用することが義務付けられています。
常用雇用人数は1年以上継続して雇用されている従業員もしくは1年以上継続しての雇用が見込まれる従業員のことです。
正社員やパート・アルバイトなど雇用形態を問わずに以下の条件に当てはまる従業員は常時雇用の従業員としてカウントする必要があります。
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金」
実雇用率の算定方法
実雇用率は実際に自社で雇用している障害を持つ従業員の割合であり、以下の計算式で算定します。
実雇用率=すでに雇用している障害を持つ方の人数÷常用労働者数
自社で雇用する障害を持つ方の従業員数は、以下の定義でカウントし、実雇用率を計算します。
障害を持つ方のカウント方法は、以下の通りです。
出典:厚生労働省「障害者雇用率制度について」
雇用人数のカウント方法に注意
常用雇用人数と障害を持つ従業員数ともにカウント方法にはいくつかの注意点があり、カウント方法などを誤ると自社に求められている正確な雇用が必要な人数を計算できません。
ここでは雇用人数の注意点を2点、紹介していきます。
障害者手帳未所持の場合は法定雇用率に影響しない
障害者雇用率制度の対象となる障害を持つ方は、自治体が発行する障害者手帳を所持している方のみとなり、未所持の方の場合、現時点の制度では雇用しても法定雇用率に影響しません。
一般雇用を希望する障害を持つ求職者もいますが、障害者雇用を希望している求職者に関しては障害者手帳を所持しているかどうかを確認すると良いでしょう。
常時雇用としてカウントしない従業員に注意
常時雇用としてカウントする自社の従業員数は前述したとおりですが、以下の場合は常時雇用の従業員数としてカウントしません。
- 見込まれる雇用の年数が1年未満の従業員
- 週の所定労働時間が20時間未満の従業員
民間企業の場合、2024年10月現在の法定雇用率は2.5%ですが、上記いずれかの条件を満たす従業員を常時雇用としてカウントしていた場合、現在の実雇用率を正しく算定できません。
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法定雇用率の引き上げについて
障害者雇用促進法の第43条の2で説明されているとおり、少なくとも5年毎に法定雇用率は現在雇用されている障害者数と失業中の障害者数に基づいて、定期的に見直されています。
2012年は法定雇用率1.8%でしたが、2013年には2.0%、2018年には2.2%、2021年には2.3%と段階的に引き上げられてきました。
2024年4月に2.5%へ引き上げ
2023年の見直しによって法定雇用率2.7%まで2段階で引き上げられることが発表され、2024年4月に2.5%へ引き上げられ、2026年には2.7%になることが決定しています。
前述したように少なくとも5年毎に法定雇用率が見直されていくため、2026年以降も引き上げられると考えられます。
多くの企業が障害者雇用の対象ですが、それは障害者雇用をおこないたいライバルも多いことを意味し、すぐに障害を持つ方を雇用できるとは限らないほか、働きやすい環境を構築されていなければ雇用してもすぐに退職されてしまうリスクがあります。
将来障害者雇用が義務づけられていることが分かっている企業は計画的にいまから準備を進めておくことが望ましいです。
法定雇用率が低い場合のペナルティとは
障害者雇用は義務であり、法定雇用率に達していない状態が続くとさまざまなペナルティが発生します。
ここでは法定雇用率に達していない場合のペナルティを紹介していきます。
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納付金支払いが発生する
厚生労働省の「障害者雇用のご案内」で説明されている通り、障害者雇用の法定雇用率を下回っている常用労働者数100人超の企業は、障害者雇用納付金制度によって障害者雇用の不足1人当たり月額5万円を支払わなければなりません。
常時雇用の従業員100人の場合は2人の障害者雇用が義務付けられているため、月額10万円が行政から徴収されることになります。
法定雇用率を超過して障害を持つ方を雇用している企業には以下の支援をおこなっています。
- 超過1人当たり報奨金として月額27,000円の支給
- 超過1人当たり報奨金として月額21,000円の支給(常用労働者100人以下の企業のみ)
- 設備等に関する助成金の支給
障害者雇入れ計画の作成
障害者雇用の法定雇用率に達していない状況が続いている、以下いずれかの要件に該当する企業は障害者雇用のための計画策定をハローワークから命じられます。
- 実雇用率が全国平均実雇用率未満であり、かつ不足数が5人以上の場合
- 実雇用率に関係なく、不足数10人以上の場合
- 雇用義務数が3人から4人の企業(労働者数150人~249人規模企業)であって雇用障害者数0人
出典:厚生労働省「障害者の雇用に向けて」
また計画の策定や実施を怠っている場合、ハローワークが障害者雇用の状況に応じて適正な指導をおこなうこともあります。
法定雇用率が低い場合の対策
障害者雇用は対象となる企業に課せられている義務であり、日頃から法定雇用率に到達できるように準備しておく必要があります。
ここでは法定雇用率が低い場合の主な対策を紹介していきます。
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ハローワークに求人情報を掲載する
厚生労働省が全国に設置するハローワーク(公共職業安定所)は、職業の安定を図ることを目的として求職者や企業にさまざまなサービスを無償で提供しています。
障害者雇用に関する相談を全般的に受け付けているほか、雇用に活用できる助成金制度も案内しているため、これから初めて障害者雇用に取り組む場合は真っ先に相談すると良いでしょう。
有料転職サイトに求人情報を掲載する
多くの求職者に自社をアピールするために有力転職サイトに求人情報を掲載すると良いでしょう。
有料転職サイトには一般雇用が多い一般的な転職サイトと障害者雇用に特化した転職サイトの2種類がありますが、一般的な転職サイトにも障害者雇用の求人情報を掲載することができます。
一般的な有料転職サイトに掲載する場合は、分かりやすく障害者雇用での求人であることをアピールしておくと良いでしょう。
特別支援学校・就労移行支援事業所と連携する
特別支援学校は障害を持つ子供が通う学校であり、高等部では高校生が就労するための授業やインターンシップを受けており、学校側と連携を図ることで自然なかたちで雇用の機会を得られます。
就労移行支援事業所は幅広い年齢層の障害を持つ方が就労・復職のための訓練を受ける場であり、事業所側と連携を図ることで、障害者雇用を目指している人材を紹介してもらえます。
また就労移行支援事業所の場合、就職後に定着してもらうための定着支援をおこなっているため、雇用した障害を持つ方が長く働いてもらえる傾向にあります。
自社の受け入れ態勢を整える
対象となる障害を持つ方を雇用してもすぐに退職されてしまった場合は、法定雇用率を維持することができないため、少しでも居心地が良くなるように受け入れ態勢を整えておくことが望ましいです。
前述した就労移行支援事業所の定着支援もあるものの、頼りっぱなしではなく、連携を図ったうえで少しでも障害を持つ方が働きやすくなるような環境作りをしていくと良いでしょう。
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まとめ
障害者雇用は今後も少なくとも5年毎に段階的に引き上げられていくことが決定しています。
障害者雇用は対象企業に課せられた義務であり、法定雇用率に達していない状態が続いている場合はさまざまなペナルティを受けてしまうため、多くの企業が積極的に障害者雇用に取り組んでいます。
それは障害者雇用をおこないたいライバル企業も多いことを意味しており、そうした状況でも着実に障害を持つ方を雇用するためには計画的な対応と入念な準備、働きやすい環境作りが欠かせません。
障害者雇用の対象になることが分かっている、もしくはいま現在法定雇用率に達していない場合は今回の記事を参考に対策していきましょう。