障害者雇用納付金制度とは?仕組み、調整金・助成金の種類、申請の流れを紹介

2024年12月12日

障害者雇用納付金制度とは?仕組み、調整金・助成金の種類、申請の流れを紹介

障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)によって、対象となる企業に障がい者雇用が義務付けられていますが、法定雇用率に達していない場合は障害者雇用納付金制度によって達していない人数分の納付金を納めなければなりません。

その一方で法定雇用率を維持している企業には障害者雇用納付金制度によって、調整金・報奨金が支払われており、法定雇用率に達している・達していないに関わらず内容を把握しておくことが望ましいです。

法定雇用率は年々上昇しており、2026年7月には2.7%以上(民間企業の場合)に引き上げられることが決まっていますが、障害者雇用納付金制度はどのように考えれば良いのでしょうか。

そこで今回は障害者雇用納付金制度の基礎知識や目的、支給される調整金・報奨金、申告義務の確認方法、申告する流れ、注意点などを網羅的に解説していきます。

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障害者雇用納付金制度とは何か

障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)によって、条例の対象となる企業は障がい者雇用が義務付けられており、法定雇用率以上を維持しなければなりません。

厚生労働省の「障害者雇用のご案内」で説明されている通り、障害者雇用納付金制度が導入されており、法定雇用率を下回っている企業から毎月納付金を徴収することで法定雇用率以上を達成している企業に調整金や助成金が支給されています。

障害者雇用納付金の支払いが必要な企業の詳細は、以下の通りです。

対象常用労働者100人超で法定雇用率を下回っている事業主
納付金の額不足1人当たり5万円(常用労働者100.5人から200人の場合は4万円)
申請期限毎年4月1日から5月15日まで(カレンダーで前後する場合あり)
納付期限全納する場合毎年4月1日から5月15日まで(カレンダーで前後する場合あり)
延納する場合(100万円以上のみ可)第1期:5月15日まで
第2期:7月31日まで
第3期:12月2日まで
※カレンダーで前後する場合あり

参考:厚生労働省「障害者雇用のご案内

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「申告申請期限、提出方法、納付期限・支給時期

申請や支払期限までに間に合わなければ、納付金の他に追徴金も請求されてしまうため、法定雇用率を維持することが大前提であるものの、納付金の支払い義務がある場合は計画的に対応することが大切です。

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障害者雇用納付金制度の目的

障がい者雇用の法定雇用率に達していない企業にとって、障害者雇用納付金制度は一種のペナルティに感じるかもしれませんが、どのような目的があるのでしょうか。

障害者雇用納付金制度は、法定雇用率を維持している企業の経済的負担の調整を目的としており、あくまでもペナルティではありません。

例えば法定雇用率を維持する企業では、障がいを持つ従業員の負担を軽減するために以下のような対応をおこなっていますが、いずれも経済的負担が生じています。

  • 障がいを持つ従業員のためのスロープやトイレなどの設備導入
  • 障がいに対する配慮を理解するための研修の実施
  • 障がいを持つ従業員が可能な限り働きやすくするための専門家の配置など

こうした経済的負担を少しでも調整しつつ、障がいを持つ方が就労する場を増やすために障害者雇用納付金制度が整備されています。

詳しくは後述しますが、法定雇用率に達していない企業から徴収した納付金は、法定雇用率以上を維持している企業に調整金や報奨金、助成金として支給しており、障がい者雇用を促進しています。

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障害者雇用納付金の仕組みとは

法定雇用率に達していない企業に支払い義務が生じる障害者雇用納付金ですが、法定雇用率に達しているかどうかをどのように判断すれば良いのか分からない方もなかにはいるでしょう。

障害者雇用納付金の仕組みは法定雇用率に基づいており、2024年12月現在の法定雇用率2.5%に達していない企業は障害者雇用納付金を支払わなければなりません。

現在の法定雇用率2.5%に達するために雇用するべき障がいを持つ方の人数は、企業によって大きく異なり、以下の計算式で算定します。

雇用が必要な障がいを持つ方の人数=常用労働者数×法定雇用率2.5%

小数点以下は切り捨てとなり、単純計算の場合は常用労働者数40人であれば障がいを持つ方1人を雇用することが義務付けられることになります。

ただし、常用労働者や雇用が必要な障がいを持つ方には定義があり、正しく算出できなければ「法定雇用率に達したつもりが実はまだ達していなかった」という問題が発生するおそれがあります。

常用労働者や雇用が必要な障がいを持つ方の定義を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

障害者雇用の義務とは?障害者雇用促進法において対象となる企業を解説

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法定雇用率は現在雇用されている障がい者数と失業中の障がい者数に基づいて定期的に見直されており、2026年7月には2.7%以上(民間企業の場合)に引き上げられることが決まっています。

障害者雇用納付金の助成金

法定雇用率に達していない企業は障害者雇用納付金を支払わなければなりませんが、法雇用率未達の状態が続いていると企業名の公表など実質的なペナルティを受けてしまうため、障がい者雇用の対象になっている場合は早期に現状を打破する必要があります。

法定雇用率に達するために活用できる場合がある制度として障害者職場実習支援事業が用意されています。

障害者職場実習支援事業とは、障がいを持つ方を雇用したことがない事業主や初めての障がい種別の方を雇用しようとする事業主を支援する助成金制度であり、以下いずれかの対応をおこなった場合に障害者職場実習等受入謝⾦・実習指導員への謝⾦・保険料が支払われます。

  • 公共職業安定所(ハローワーク)と協力しながら実習生を一定期間の職場実習を実施
  • 職場実習後に実習生を雇用する
  • 障がい者雇用の知見のある事業主が経験・ノウハウが不足している事業主に自社の職場見学を実施した場合

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者職場実習等支援事業のごあんない

障害者職場実習支援事業の条件を満たした場合に支給される金額は、それぞれ以下の通りです。

  • 障害者職場実習等受入謝⾦:実習対象者1人につき1日当たり5,000円
  • 実習指導員への謝⾦:実習指導員1人につき1日の支援時間×2,000円
  • 保険料:実費

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者職場実習等支援事業のごあんない

 詳しく障害者職場実習支援事業を知りたい方は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の「障害者職場実習等支援事業のごあんない」をご覧ください。

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障害者雇用納付金の手続きの流れ

障害者雇用納付金の申告義務のある事業主は、法定雇用率に達している・達していないに関わらず常用労働者数100人超の事業主です。

申告が必要な期間は前年度の4月から本年度の3月までであり、申告期限は4月1日から5月15日(カレンダーで多少前後)に設定されているため、計画的に対応することが望ましいです。

ここでは障害者雇用納付金の手続きの主な流れを紹介していきます。

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常用労働者数の計算

法定雇用率を達成している・していないを判断するために、まずは常用労働者数の計算をおこないます。

常用労働者とは、1年を超えて継続して雇用されている従業員もしくは1年以上継続しての雇用が見込まれる従業員のことです。

常用労働者の詳細な定義は後述しますが、正社員やパート・アルバイトなど雇用形態を問わずに以下の条件に当てはまる従業員は常用労働者としてカウントする必要があります。

週の所定労働時間労働者の種類カウント方法
30時間以上常時雇用労働者1人としてカウント
20時間以上30時間未満短時間労働者0.5人としてカウント

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金

常時雇用している従業員でも週の所定労働時間が20時間未満の場合は、常用労働者としてはカウントしません。

また上記の定義に従って常用労働者数が100人以下の場合は、障害者雇用納付金の申告義務はないものの、障がいを持つ従業員を雇用していれば後述する調整金・助成金の支給対象となるため、申告することが望ましいです。

雇用障害者数の計算

障がいを持つ方の雇用人数のカウント方法は、障がいの度合いと週の所定労働時間によって変わります。

障がいを持つ方のカウント方法は、以下の通りです。

出典:厚生労働省「障害者雇用率制度について

重度の身体障がい、もしくは重度の知的障がいを持つ方の場合は1人の雇用で2人分とするダブルカウントが適用されますが、精神障がいの場合の障がい者手帳には重度に該当する区分が現時点ではないため、1人分になります。

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除外率の確認と計算

常用労働者数と雇用障がい者数を把握した後は、自社の業種が除外率の対象になっているかどうかを確認しましょう。

除外率制度とは、免許・資格や必要もしくは安全性に懸念点があるなど職業の性質上、障がい者雇用が一般的に難しいと考えられる業種に適用される制度で、除外率に応じた障がい者雇用の人数が差し引かれる仕組みです。

厚生労働省の「障害者雇用率制度・納付金制度について関係資料」で説明されているとおり、除外率制度は廃止する方向で段階的に縮小されており、完全に廃止されるまでの間は業種ごとに除外率が設定されています。

厚生労働省の「障害者雇用率制度・納付金制度について関係資料」で除外率が自社の業種に適応されるかどうかを確認した上で次の計算式で算出します。

【除外率が適応される場合】

常用労働者数×(100%-除外率)×法定雇用率(2.5%)

【除外率が適用されない場合】

常用労働者数×法定雇用率(2.5%)

上記の計算式で前年度4月から本年度3月までの全ての月で雇用が必要な障がい者数を上回っている場合は、障害者雇用納付金を支払う必要がありませんが、下回っている場合は以下の計算式で納める納付金を計算します。

納付金=(雇用が必要な障がい者数-雇用している障がいを持つ従業員数)の各月での合計×1人当たり50,000円

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申告申請書の作成・提出

支払いが必要な納付額を把握した後は、申告申請書の作成をおこないますが、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が提供する電子申告申請システムで電子申請することもできます。

電子申請する場合は、以下の4ステップで作成・提出します。

  1. 電子申告申請システム用のID・パスワードを取得
  2. 電子申告申請システムで申告申請書を作成
  3. ログインした状態で申告申請書・添付書類データを送信
  4. 審査結果メールの受信で完了

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「令和6年度障害者雇用納付金制度申告申請書記入説明書

大きな注意点として電子申告申請システムの申告申請書の送信可能時間が決まっており、システムで送信できるのは前年度の4月1日から本年度の3月31日(カレンダーで前後)までで5時から23時の間のみです。

申告申請期限直前はシステムにアクセスが集中することで間に合わないおそれがあるため、可能な限り早く電子申請を済ませることが望ましいです。

また審査結果メールは申請内容にエラーがあっても該当箇所と共に送信されていますが、メールが届かない場合は送信自体できていない可能性があるため、届かない場合は各都道府県の申告申請窓口に問い合わせるようにしましょう。

障害者雇用納付金の納付

障害者雇用納付金の納付は、以下のいずれかでおこないます。

【ペイジー(インターネットバンキング)での納付】

金融機関のインターネットバンキングによって納付します。

【納付書による金融機関窓口での納付】

指定の納付書で納付します。納付書は事前に各都道府県申告申請窓口から送付されていますが、届かなかったり新たに申告対象になったりした場合は各都道府県申告申請窓口に連絡する必要があります。

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「令和6年度障害者雇用納付金制度申告申請書記入説明書

納付金額が100万円以上の場合は延納を申請することも可能であり、3回に分けて期限内にそれぞれ支払います。

延納申請をしていなければ延納が認められないほか、延納で認められた納付金額が期限内に支払われない場合、各期の延納の額を修正もしくは追納しなければなりません。

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支給される調整金・助成金

法定雇用率以上を維持している事業主の場合、障害者雇用納付金から以下いずれかの調整金・助成金が支給されます。

  • 障害者雇用調整金
  • 在宅就業障害者特例調整金
  • 報奨金
  • 在宅就業障害者特例報奨金

調整金・助成金を受け取るためには、障害者雇用納付金の申告申請とは別に申請が必要になるため、支給対象になっている場合は障害者雇用納付金と同じタイミングで申請すると良いでしょう。

それぞれ詳しく解説していきます。

障害者雇用調整金

常用労働者数100人超で法定雇用率以上を達成している事業主の場合は、障害者雇用調整金によって法定雇用率を超過して雇用している障がいを持つ従業員1人当たり月額29,000円が支給されます。

厚生労働省の「障害者雇用調整金・報奨金の支給調整について」で説明されている通り、2024年4月1日から支給対象が10人を超える場合、11人目から減額調整がおこなわれ、1人当たり月額23,000円の支給となります。

申請期限は障害者雇用納付金と同様の4月1日から5月15日(カレンダーで多少前後)に設定されているため、支給対象であることが分かっている場合は同じタイミングで申請すると良いでしょう。

10月から12月の間に支給されますが、正確な日程は支給決定通知によって知らされる仕組みです。

在宅就業障害者特例調整金

常用労働者数100人超で法定雇用率以上を達成している事業主が在宅就業障害者・在宅就業支援団体に仕事を発注し対価を支払った場合、在宅就業障害者特例調整金によって支払った対価に基づく調整金が支給されます。

支給される在宅就業障害者特例調整金の額は、以下の計算式で算出します。

支給される金額=調整額(21,000円)×年度内に支払った対価の総額÷評価額(35万円)

また法定雇用率を達成していない事業主が在宅就業障害者・在宅就業支援団体に仕事を発注し対価を支払った場合、在宅就業障害者特例調整金の額に応じて障害者雇用納付金が減額されます。

在宅就業障害者特例調整金に関しても申請期限は障害者雇用納付金と同様の4月1日から5月15日(カレンダーで多少前後)に設定されているため、同じタイミングで申請すると効率的に対応できます。

10月から12月の間に支給されますが、正確な日程は支給決定通知によって知らされます。

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報奨金

常用労働者数100人以下で法定雇用率以上を達成している事業主の場合は、報奨金によって法定雇用率を超過して雇用している障がいを持つ従業員1人当たり月額21,000円が支給されます。

厚生労働省の「障害者雇用調整金・報奨金の支給調整について」で説明されている通り、2024年4月1日から支給対象が35人を超える場合、36人目から減額調整がおこなわれ、1人当たり月額16,000円の支給となります。

申請期限は障害者雇用納付金と同様の4月1日から5月15日(カレンダーで多少前後)に設定されているため、支給対象であることが分かっている場合は同じタイミングで申請すると良いでしょう。

10月から12月の間に支給されますが、正確な日程は支給決定通知によって知らされる仕組みです。

在宅就業障害者特例報奨金

常用労働者数100人以下で法定雇用率以上を達成している事業主が在宅就業障害者・在宅就業支援団体に仕事を発注し対価を支払った場合、在宅就業障害者特例報奨金によって支払った対価に基づく報奨金が支給されます。

支給される在宅就業障害者特例調整金の額は、以下の計算式で算出します。

支給される金額=調整額(17,000円)×年度内に支払った対価の総額÷評価額(35万円)

在宅就業障害者特例報奨金に関しても申請期限は障害者雇用納付金と同様の4月1日から5月15日(カレンダーで多少前後)に設定されているため、同じタイミングで申請すると効率的に対応できます。

10月から12月の間に支給されますが、正確な日程は支給決定通知によって知らされます。

特例給付金

特例給付金はすでに廃止されている制度ですが、短時間労働であれば就労できる障がいを持つ方の雇用を促進することを目的に所定労働時間週10時間以上20時間未満の障がいを持つ従業員を対象として給付金を支給していました。

厚生労働省の「令和4年障害者雇用促進法の改正等について」で説明されているとおり、2024年4月1日から所定労働時間週10時間以上20時間未満の障がいを持つ従業員の場合も実効率で0.5としてカウントすることが決定し、それに伴って特例給付金は廃止されました。

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障害者雇用納付金の申告義務の確認方法

障害者雇用納付金の申告義務のある事業主は、常用労働者数100人超の事業主ですが、自社の労働者数が100人を超えているかどうかをどのように把握すれば良いのでしょうか。

ここでは障害者雇用納付金の申告義務の有無を確認する方法を解説していきます。

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常用労働者数を把握する

常用労働者とは、1年を超えて継続して雇用されている従業員もしくは1年以上継続しての雇用が見込まれる従業員のことであり、具体的な範囲は以下のように定義されています。

  • 雇用期間の定めなく雇用されている労働者
  • 一定の期間を定めて雇用されている労働者
  • パートタイム労働者
  • 役員を兼務している労働者
  • 外務員である労働者
  • 出向中の労働者
  • 国内の人事権が及ぶ海外勤務労働者
  • 在留資格があり就労が認められている外国人労働者
  • 労働者派遣事業の派遣労働者
  • 在宅勤務者
  • 休職中等の労働者

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「令和6年度版ご案内

上記のように雇用形態や勤務形態に問わず、条件に該当する場合は次のようにカウントする必要があります。

週の所定労働時間労働者の種類カウント方法
30時間以上常時雇用労働者1人としてカウント
20時間以上30時間未満短時間労働者0.5人としてカウント

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金

また障害者雇用納付金の申告が必要な期間は前年度の4月から本年度の3月までであり、月ごとの常用労働者数とそれに基づく法定雇用率を計算する必要があるため、申告の期間内に勤務していた退職済みの常時雇用労働者・短時間労働者の人数に関しても把握しておかなければなりません。

ただし、常時雇用している従業員でも週の所定労働時間が20時間未満の場合は、常用労働者としてはカウントしません。

常用労働者数100人以下の場合は申告義務なし

前述した常用労働者数の総数が連続もしくは断続的に5ヶ月以上100人を超える場合は障害者雇用納付金の申告義務があり、100人未満の場合は申告義務がありません。

申告義務があるにも関わらず、申告を怠った場合は納付金を支払う際に納付額の1割の追徴金が加算されるほか、督促状の期限を過ぎても完納しない場合は財産の差し押さえなどのペナルティを受けてしまいます。

また2024年12月現在の法定雇用率では、常用労働者数が100人未満の事業主には申告義務がないものの、障がいを持つ従業員を雇用しているのであれば報奨金の支給を受けるために自主的に納付金と報奨金の申告をしましょう。

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障害者雇用納付金にまつわる注意点

障害者雇用納付金を考える上ではいくつかの注意点があり、事前に把握していなければ対応が遅れてしまうおそれがあります。

ここでは障害者雇用納付金にまつわるいくつかの注意点をご紹介していきます。

添付書類の提出が必要な場合がある

障害者雇用納付金のみの申告であれば添付書類が求められることはないものの、常用労働者数300人以下の事業主が調整金や報奨金を申告する場合は、源泉徴収票や障がい者手帳の写し、給与支払額報告書などの添付書類を提出しなければなりません。

必要な添付書類の種類は企業や障がいを持つ従業員の雇用状況によって大きく左右されますが、どの場合でも源泉徴収票・賃金台帳の写し・給与支払額報告書は障がいを持つ従業員の全員分必要になります。

詳細を知りたい方は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の「令和6年度障害者雇用納付金制度申告申請書記入説明書」をご覧ください。

対象となるのは障害者手帳所持者のみ

障がい者雇用の対象となる障がいを持つ方は、自治体から発行されている障がい者手帳を所持している方のみとなります。

障がい者手帳を保有していない方の場合、現時点の障害者雇用促進法では雇用しても法定雇用率に影響しません。

障がい者手帳は一定以上の主に次の障がいを持つ方が発行できる手帳のことであり、身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳の3種類があります。

  • 身体障がい
  • 知的障がい
  • 精神障がい
  • 発達障がい

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法人単位での申請が必要

障害者雇用納付金や調整金・報酬金の申告申請はハローワークに認定を受けている場合を除き、法人単位で本社が手続きしなければなりません。

誤って本社以外の支社が申告申請をしていた場合は、撤回書・取り下げ書の提出をしたうえで改めて本社が対応する必要があるほか、本来なら支給対象ではない支社が調整金・報奨金を受け取っていた場合は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に返還する必要があります。

ただし、例外として以下のいずれかに当てはまる場合のみは手続き不要となります。

  • 本社分と支社分を合算して変動がない場合
  • 納付期限の翌日から2年を超えて時効が成立した場合

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「令和6年度障害者雇用納付金制度申告申請書記入説明書

支社が納付金を納付している場合、撤回書を提出することで納付金が還付・納付金の再申告になりますが、時効が成立している場合は還付の権利も消失しているとみなされるため、還付を受けることができません。

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よくある質問

ここでは障害者雇用納付金に関するよくある質問を紹介していきます。

退職者はどのように考えれば良いですか?

障害者雇用納付金を申告する上では、月毎に常用労働者数と法定雇用率を計算するため、年度途中の退職者の場合も在職中の期間でカウントする必要があります。

休職中の従業員も常用労働者に含まれるんですか?

病気や育児、介護などによって休職している従業員の場合も休職前の週の所定労働時間が20時間以上であった場合は、常用労働者としてカウントします。

あくまでも常用労働者は1年を超えて継続して雇用されている従業員もしくは1年以上継続しての雇用が見込まれる従業員のことであり、休職中でも雇用契約が終了したわけではないため、休職前の週の所定労働時間に基づき、常時雇用労働者・短時間労働者のどちらかに分類します。

当月支給ですが、給与支給がない休職中の従業員はどう考えれば良いですか?

その場合も休職前の週の所定労働時間に基づき、常時雇用労働者・短時間労働者のどちらかとしてカウントする必要があります。

傷病手当などによって給与の支給がない場合でも会社に在籍していることには変わりないため、常用労働者としてカウントします。

障害者雇用納付金を納付していれば障がい者雇用をしなくても良いんでしょうか?

障がい者雇用は対象企業に課せられている義務であり、法定雇用率を下回る状態が続いているとハローワークから障がい者雇用のための計画策定を命じられたり、指導がおこなわれたりします。

指導を受けている状況でも期間内に法定雇用率に達しない場合、最終的にはペナルティとして企業名が公表されてしまいます。

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まとめ

障害者雇用納付金制度は、法定雇用率に達していない障がい者雇用の義務がある企業から納付金を徴収し、法定雇用率を維持している企業の負担を調整する制度です。

常用労働者数の総数が連続もしくは断続的に5ヶ月以上100人を超える場合は障害者雇用納付金の申告義務がありますが、常用労働者や障がいを持つ従業員には定義があるほか、本社が法人単位で対応するように求められています。

正しく申告申請ができなければ期限に間に合わないことで追徴金が請求されてしまうため、納付金の支払い義務がある場合は計画的に対応することが大切です。

もちろん対象企業に課せられている障がい者雇用は義務であり、障害者雇用納付金さえ支払っていれば障がい者雇用に取り組まなくて良いということにはなりません。

法定雇用率に達しない状態が続いていると行政指導が入り、最終的には企業名が公表されてしまうため、周囲の信頼の低下を避けるためにも日頃から障がい者雇用に取り組むようにしましょう。

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担当者T.Aのイラスト

記事の監修者

T.A

社会福祉士、社会教育主事、サービス管理責任者

福祉系大学卒業後、社会福祉法人にて就労継続支援A型事業の立ち上げにジョイン。業務指導と併せて商品開発や営業に従事。また同法人にて放課後等デイサービス事業や相談支援事業、就労継続支援B型事業などの立ち上げをおこなう。
その後、特例子会社にてBPO業務管理や障がいのあるメンバーのマネジメントや採用に携わり、現在は福祉コンサルティング会社にて福祉事業のSVとしてクライアントの運営サポートをおこなっている。