障がい者人口の増加に伴って急速に障がい者グループホームの需要が拡大しており、国や行政が障がい者グループホームの立ち上げを促進するために多岐にわたる補助金制度を整備しています。
しかし特に初めて障がい者グループホームの開業を検討している場合、どういった補助金制度があるのか分からず、困っているのではないでしょうか。
そこで今回は障がい者グループホームの立ち上げ・運営で発生する費用といくつかの補助金をご紹介していきます。
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障がい者グループホームとは
障がい者グループホーム(共同生活援助)とは、障がいや難病を持つ入居者が世話人や生活支援員などから支援を受けながら、共同生活の中で自立を目指すための障がい者福祉施設のことです。
入居者それぞれに個室が用意されていますが、食堂・風呂場・リビングなどは共同スペースになっており、入居者同士が共同生活を送るために協力し合う必要があります。
今回は簡易的な説明となりましたが、詳しく障がい者グループホームを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
なお、GLUGでは就労継続支援事業を始め、障がい者雇用や生活支援など幅広い事業の開業から運営までサポートしています。
福祉事業の概要やGLUGのサポートについて詳しく知りたい方はこちらのページもご確認ください。
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障がい者グループホームの対象者・入居条件
障がい者グループホームに入居できる対象者は、障害者総合支援法が定める身体障がい・知的障がい・発達障がいを含む精神障がい・難病(令和6年4月より369疾病が対象)を持っている方です。
身体障がいの場合は65歳未満か、65歳になるまでに何らかの障がい福祉サービスを利用したことがある方のみが対象になります。
入居できる年齢は原則18歳以上となるものの、児童相談所長が許可した場合のみ、15歳から入居することができます。
また障がいの度合いを以下の7段階に分類した区分である障がい支援区分を受けていることが入居条件の1つです。
障がいが軽い | ← → | 障がいが重い | ||||
非該当 | 区分1 | 区分2 | 区分3 | 区分4 | 区分5 | 区分6 |
グループホーム独自の入居制限を設けている場合があり、国から支払われる給付費が少ない非該当・区分1や支援に高度な専門性やスキルが必要になる区分6に分類される重い障がいの場合は入居を断られるケースもあります。
障がい者グループホームにかかるお金は?
障がい者グループホームでは、入居者側・運営側共にさまざまな種類のお金が発生します。
ここでは入居者側・運営側別に障がい者グループホームで発生する主なお金の種類を紹介していきます。
入居所側
障がい者グループホームの入居者の場合は、主に以下の費用が毎月発生します。
- 障がい福祉サービスの利用料(対象になる場合のみ)
- 家賃
- 食費
- 光熱費日用品費
障がい者グループホームの利用料は、原則1割負担であり、前年の世帯収入によって以下のように負担上限額が0円、もしくは37,200円のどちらかに分類されます。
ただし、多くの入居者が生活保護・低所得のどちらかに分類されており、利用料が発生しません。
出典:e-GOV法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」
障がい福祉サービス利用料には所得割16万円未満が該当する一般1も存在しますが、障がい者グループホームでは対象外となるため、今回の表から除外しています。
家賃・食費・光熱費・日用品費はすべて実費での支払いとなり、食費に関しては食事の提供がおこなわれていない場合は支払う必要がありません。
福島市の「共同生活援助における利用者負担額等の取扱いについて」で説明されている通り、入居者それぞれの精算が煩雑になりやすいという運営側の理由から光熱費と日用品費は、一定の概算額で一時的に請求している障がい者グループホームも多いですが、定期的に清算されたうえで余剰金が生じた場合に返金されます。
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運営側
障がい者グループホームにおける運営側で発生するお金は、以下のとおりです。
- 生活支援員などの職員に支払う人件費
- 家賃・所有する場合のローンの支払い
- 食費・光熱費・日用品費
- 火災保険などの保険料
障がい者支援の観点から入居者の家賃・食費・光熱費などで利益を出すことは国・行政が認めておらず、入居者から入ってくるお金は入居者のために支払った額と同額、もしくはマイナスとなります。
実費よりも高い金額で徴収・利益を出していることが発覚した場合、その差額を余剰金として入居者に全額返還しなければなりません。
運営側は以下いずれかの計算式で家賃を設定・毎月入居者に請求した上でまとめて家賃やローンの支払いに充てています。
▼賃貸住宅の場合
障がい者グループホーム事業者が大家に支払う家賃 ÷ 定員で計算します。
▼グループホーム事業者が所有する物件の場合
物件の建設費用(土地代を除きます) ÷ 回収期間 ÷ 定員で計算します。
例えば家賃12万円の賃貸住宅を障がい者グループホームとして提供・入居者の定員が4人の場合は、入居者に請求する家賃は3万円以下に設定されます。
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障がい者グループホームを利用する際の補助金とは
障がい者グループホームは、1人暮らしよりも月の生活費が安い傾向があるものの、それでも所得が少ない方にとっては入居が負担になってしまうケースもあります。
障がい者グループホームへの入居が所得的に負担になりやすい方のために国や行政が補助金などさまざまな支援制度を用意しています。
ここでは入居者の障がい者グループホームの負担を軽減できる特定障害者給付の概要を説明していきます。
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特定障害者特別給付費とは
特定障害者特別給付費とは、所得の少ない障がい者グループホーム入居者を支援するための国の制度で、生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯の利用料0円の方が対象です。
障害者総合支援法によって定められている制度であり、障がい者グループホームの家賃から月額最大1万円を差し引くことができます。
基本的には家賃1万円未満の場合は実費分が補助として支給され、家賃1万円以上の場合は上限である1万円が補助として支給される仕組みです。
あくまでも家賃補助を目的としているため、食費などに使うことはできないほか、支給されるのは入居者本人ではなく障がい者グループホームの運営側であり、毎月の家賃から補助額分が差し引かれます。
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特定障害者給付特別給付費を受けるための手続き
生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯に該当している場合、以下のステップで申請します。
- 入居中のグループホームで家賃の証明書を作成してもらう
- お住まいの地域の自治体窓口で申請
- 支給のための審査開始
- 支給額の決定・補助の開始
支給決定後も年1回のペースで負担上限月額の見直しや更新がおこなわれており、1度審査に通過したとしてもその後も毎年補助金を受け取れるとは限りません。
また申請した入居者の収入や家賃が変わったなど状況に変化があれば、その都度行政に報告・変更手続きをしなければなりません。
障がい者グループホームの開業・経営に利用できる補助金とは
障がい者グループホームをゼロから立ち上げる場合の初期費用は1,000万円ほどかかるほか、実質的な利益は国・行政から支援の対価として支給される基本報酬のみであるため、補助金などの活用で安定した経営をおこなうことが望ましいです。
ここでは障がい者グループホームの開業・経営に役立つ主な補助金をご紹介していきます。
社会福祉施設等施設整備費補助金
社会福祉施設等施設整備費補助金とは、社会福祉法人等がグループホームなどの福祉施設を整備するための費用の一部を国と自治体が補助する制度です。
埼玉県の「社会福祉施設等施設整備費の国庫補助について」で説明されている通り、社会福祉施設等施設整備費補助金の補助率は国が2/3、自治体が3/4と補助額が大きいため、開設・経営する上では強い味方となります。
ただし実際に補助金が支給されるまでに長ければ数年ほどかかるほか、申請のための書類が多岐にわたるため、計画的に準備していくことが大切です。
障害者グループホーム緊急整備補助金
障害者グループホーム緊急整備補助金とは、障がい者グループホームの整備を促進するために設けられた三重県独自の補助金制度です。
内容は前述した社会福祉施設等施設整備費補助金と同様ですが、補助上限額が1,500万円(県補助率1/2、市町補助率1/2)になっているほか、以下の条件が掲げられています。
出典:三重県「障がい者グループホームの概要【令和元年9月版】」
三重県が実施している補助金制度であるものの、申請・相談は県内の各市町村でもおこなうことができます。
名古屋市共同生活援助事業設置費補助金制度
名古屋市共同生活援助事業設置費補助金制度とは、名古屋市が独自に実施している補助金制度です。
重度障がいを持つ方を受け入れるグループホーム設置促進を目的として、以下の上限額を支給しています。
【初度弁済費】
- 定員4人以上:650,000円
- 定員3人:488,000円
- 定員:325,000円
【消防用設備費】
- 590,000円
参考:名古屋市「名古屋市共同生活援助事業設置費補助金制度の変更について」
補助金の支給対象になる事業者の条件は、以下の通りです。
- 名古屋市内で新たに住居(グループホーム)を設置する
- 開設後の障害支援区分4以上の方の割合が定員の1/2を超える
- サービス管理責任者・生活支援員の1人以上が行動援護従業者養成研修などを修了
参考:名古屋市「名古屋市共同生活援助事業設置費補助金制度の変更について」
条件となる研修を詳しく知りたい方は、名古屋市の「名古屋市共同生活援助事業設置費補助金制度の変更について」をご覧ください。
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障害者グループホームスプリンクラー整備費補助金
障害者グループホームスプリンクラー整備費補助金は、千葉県船橋市が独自に実施している補助金制度です。
火災発生時に自力で避難することが難しい障がい者グループホーム入居者の安全を確保することを目的としてスプリンクラーの整備費の一部を補助しています。
補助の対象者は、賃貸物件のグループホームで新たにスプリンクラーを整備する株式会社や社会福祉法人などの法人であり、補助される金額は以下3つのうち、最も低い金額に補助率3/4を乗じた額になります。
- 事業又は工事請負契約等を締結する単位ごとに対象経費の実支出額の合計額
- 総事業費から寄付金その他の収入額を控除した額
- 18,000円×延べ面積の合計
参考:船橋市「船橋市障害者グループホームスプリンクラー整備費補助金交付要綱」
グループホーム整備支援事業
グループホーム整備支援事業は、兵庫県神戸市が独自に実施している補助金制度であり、障がい者グループホームの既存物件を活用した新たな設置や回収・新築する場合の費用の一部を補助しています。
【補助額】
- 市東部(東灘区・灘区・中央区)における整備:補助上限額1,200万円
- 市東部以外での整備(市街化調整区域を除く):補助上限額1,000万円
- 市東部以外での整備(市街化調整区域) :補助上限額1,000万円
- 既存改修整備:補助上限額500万円
参考:神戸市「障害者向けグループホーム整備への支援の実施について」
補助の条件の中には整備工事等に着手していないこと・整備後に10年以上グループホームを運営することという内容も含まれているため、事前に確認しておく必要があります。
詳しく補助対象費や条件を知りたい方は、神戸市の「障害者向けグループホーム整備への支援の実施について」をご覧ください。
障がい者グループホーム運営事業補助
障がい者グループホーム運営事業補助とは、大阪府吹田市が独自に実施している補助金制度であり、グループホームでの生活を望む障がいを持つ方の処遇向上・社会的自立の促進を図ることを目的にしています。
【補助金の種類】
- 施設整備費補助:上限額350万円
- スプリンクラー設置費補助:上限額300万円
- 重度障害者受入補助:上限額180万円
- 施設借上費補助:月額22万円に賃借期間の月数を乗じた額
- 看護職員配置費補助:月額37万5千円に看護職員の配置人数と配置月数を乗じた額
参考:吹田市「補助対象経費、補助金の額等」
詳しく補助の詳細や条件を知りたい方は、吹田市の「補助対象経費、補助金の額等」をご覧ください。
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グループホーム運営費等補助金
グループホーム運営費等補助金とは、千葉県船橋市が独自に実施している補助金制度であり、運営費の一部を補助することで障がい者グループホーム入居者の自立をサポートすることを目的にしています。
補助金の対象となるのは船橋市が援護した方が入居する定員6人以下の障がい者グループホームで、補助金額は障害者グループホームの定員数や支援区分と自立支援給付費の差額によって決まります。
詳しく補助率を知りたい方は、船橋市の「船橋市グループホーム運営費等補助金交付要綱」をご覧ください。
グループホーム等入居者家賃補助
グループホーム等入居者家賃補助とは、千葉県船橋市が実施している補助金制度で、障がい者グループホーム入居者を対象に家賃の一部を助成します。
船橋市の『グループホーム等入居者家賃補「身」「知」「精」「難」』で説明されているように、具体的な対象者はグループホームもしくは生活ホームに入居している身体・知的・精神障がいや難病を持つ方で市町村課税が非課税の方となり、生活保護の住宅扶助受給者はこの補助金では対象外になります。
助成額は毎月の家賃の1/2(上限月額25,000円)ですが、前述した特定障害者特別給付費が支給されている場合は家賃から特定障害者特別給付費を控除した額の1/2(上限月額20,000円)となります。
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障がい者グループホームで使える融資制度とは
障がい者グループホームをゼロから立ち上げる場合、物件取得費や設備導入費などで1,000万円前後かかるため、自己資金だけで賄えない場合は金融機関や行政の融資制度を活用しましょう。
障がい者グループホームで活用できる融資制度は多岐にわたりますが、その中でも特におすすめなのが日本政策金融公庫の新規開業資金です。
日本政策金融公庫が運営する創業融資のメリット・デメリットは、以下の通りです。
【メリット】
- 十分な実績がなくても審査に通過しやすい
- 無担保・無保証人でも申請できる
- 特別利率が適用されやすい
- 設備資金は20年以内、運転資金は10年以内と返済期間が長い
【デメリット】
- 創業計画書を提出する必要がある
- 審査に通過する必要がある
デメリットに関しては他の金融機関の融資制度においても当てはまるため、現状は特に目立つデメリットがないといえます。
以前は「新創業融資制度」という名称であり、調達する資金の10分の1以上の自己資金を用意している方のみが対象という条件がありましたが、2024年3月に撤廃・リニューアルされました。
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まとめ
障がい者グループホームをゼロから立ち上げる場合の初期費用は1,000万円ほどかかるほか、実質的な利益は国・行政から支援の対価として支給される基本報酬のみとなります。
安定した経営を目指す上では、障がい者グループ融資制度や国・行政の補助金制度を活用しつつ、支援の内容を充実・基本報酬の単価を上げることが大切になるので、自身に合った制度を探してみると良いでしょう。
初めての起業や異業種参入で障がい者グループホームの立ち上げを検討している場合、フランチャイズの加盟による開業がおすすめです。
フランチャイズであれば業界を知り尽くした本部が経営ノウハウの提供や個人では難しい行政への対応代行をしているほか、補助金の案内・申請サポートもおこなっています。
最初から安定した経営を行いたい場合は、フランチャイズで障がい者グループホームを開業することも検討してみましょう。
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